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サンフランシスコ郊外の風力発電集積地を訪問

原発1基分の発電容量

 先日、サンフランシスコに出張した際、郊外にある風力発電の集積地へ視察をかねてドライブした。サンフランシスコ市から南東方向に1時間ほど走ると、テハチャピ山地に着く。ハイウエイ580号沿いのアルタモントパスには幾重にも丘がつらなり、丘の峰々に風力発電が林立しているのが見える。この一帯は14年末現在、世界最大の発電容量を持つ「アルタウインドエナジーセンター」で、合計の発電容量は1320MW(メガワット)、平均的な原発1基分に相当する。

アルタモントパス(Altamont Pass)の風力発電地帯 

07年当時は「巨大な風車の墓場」の印象が強かったが・・・

 2010年秋から12年初めにかけて設置された最新の風力発電で、最初に1.5MWの発電機100本を設置したのに続いて、3MWの発電機が約400本導入されていた。実は07年夏にも同地を訪れたことがある。その時見たのは1970〜80年代にかけて最初に導入された風力発電の集積地だった。1万本はあると説明されたが、発電容量は300KW(キッロワット)程度の小型のものばかりだった。しかもその3割近くの風車は羽が折れ、故障で動かず、「巨大な風車の墓場」といったイメージが強かった。その頃、後発の日本では1MWを超す大型風車が各地で建設されていたため、シスコ発電の老朽化が特に印象に残っていた。

最新型風力発電でイメージを一新

 今回訪れたアルタウインドセンターは老朽化した風力発電の集積地とは別の隣接した丘陵に新しく設置した最新型風力発電だった。アメリカは日本と違って風力発電の適地が多く、古くなった場所にリプレイスするのではなく、新しい場所に短期間に巨大な集合型の風力発電所がつくれる。広大な丘陵地帯に民家はなく、騒音被害なども気にする必要がない。野鳥類は渡り鳥保護条約法やハクトウワシ・イヌワシ保護法などで守られているため、環境アセスメントも比較的簡単で、「さすがアメリカ」と脱帽せざるを得なかった。

2030年までに風力で電力供給の20%を賄う

 14年現在、アメリカの風力発電は、電力供給量で中国についで世界第2位、合衆国の電力供給の4.18%を占めている。米エネルギー省はこの比率を2030年までに20%まで引き上げる計画で、その実現に向けて着々と準備を進めている。温暖化対策に熱心なオバマ米大統領は、昨年11月北京で開かれたアジア太平洋経済協力会議で中国の習近平国家主席と会談した際、「25年までに05年比で温室効果ガス(GHG)を26〜28%削減する」と発表した。さらに米政府は50年には80%削減という野心的な目標を掲げているが、その切り札の一つが風力発電であることは言うまでもない。

中西部は陸上風力、東海岸は洋上風力で競う

 米国内の風力の発電容量を州ごとに見ると、1位がテキサス州(12.4GW=ギガワット)、2位がカリフォルニア州(5.8GW)、3位アイオア(5.2GW)の順になっており、中西部に適地が多い。一方東海岸地域では沿岸の沖合に強く、変動の少ない風が吹く適地が多い。すでにマサチュセッツ、ロードアイランド、ニュージャージなどの各州の沖合では洋上風力発電が次々と設置されているそうだ。30年の電力供給20%のうち、4%は洋上風力で賄う計画だ。海陸合わせ巨大な風力資源に恵まれているアメリカでは、その気になれば50年にGHG80%削減も、不可能ではないように思えてくる。ビジネスとしての潜在成長力も大きく、後は米国の本気度が問われるだけで、なんともうらやましい限りだ。

(2015年3月1日記)

 
 
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