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リユース文化を育てよう〜成熟社会の新ライフスタイル〜

物より心の豊かさ求める時代

 内閣府が定期的に実施している「国民生活に関する世論調査」の中で、「今後の生活で何に重きをおくか」という質問があります。具体的な質問内容としては、「心の豊かさ」と「物の豊かさ」のどちらを選ぶかという問いです。それによると、1980年頃までは「物の豊かさ」が「心の豊かさ」を上回っていましたが、80年代の後半にはいると「心」が「物」を大きく上回るようになり、21世紀に入った今では、国民の6割以上が「心の豊かさ」に重きを置くようになっています。

物欲時代と使い捨て文化

 人々が「物」より「心」を重視するようになった社会を成熟社会と呼んでいます。経済力が高まって「物」が豊富になってきました。自動車が欲しい人は誰でも手にいれることができます。家の中には、家電類、衣類などがあふれています。テレビなどは一家に2台、3台のところも少なくありません。冷蔵庫には食料品が満ち満ちています。物欲が盛んだったかつての高度成長期には、人々は新品を買いあさりました。次々と登場してくる新製品が欲しくなり、まだ使える物までどんどんごみとして使い捨ててきました。物欲の時代は同時に使い捨て文化の時代でもあったわけです。

物を大切に使う時代の到来とリユース社会

 心の豊かさが重視される成熟社会に入った今、物に対する考え方も大きく変わってきました。人々は、使える物はできるだけ長く使いたいと思うように変わってきました。環境省でも、使い捨て社会から資源循環型社会への移行を推奨しており、使える物は何度でも使うリユース(再使用)社会づくりに力を入れています。まだ十分使えるが、自分には必要がなくなった品物は沢山あります。私は新聞社の特派員としてベルギーのブリュッセルに駐在していたことがあります。その時、地域に住むお母さんたちが乳母車や子供を入れてベビーサークル、幼児服や靴などを楽しそうに譲り合っている姿を見て感心したことがあります。

リユース交換を通して顔の見える関係が復活

 子供が大きくなり乳幼児製品が不要になったお母さんとこれから子育てに取り組むお母さんの小さな地域ネットワークがこの譲り合いを可能にしていました。リユース製品は、中古品なので、製品の出し手も受け手も消費者が中心です。そこには新品の売買と違って、出し手と受け入れ側が直接顔の見える関係で接する機会がずっと多いように思います。あなたが大切に使ってきたものなので私も大切に使わせてもらいます、という関係です。

人間は一人では生きられない

 東日本大震災は大きな教訓を教えてくれました。人間は一人では生きられないということです。顔の見える関係、助け合い、思いやりのきずなが、震災からの立ち上がる際の最大のエネルギーになっていることです。人とのきずなを大切にし、困ったときに助け合う社会は、高度成長期以前の伝統的な日本社会には脈々と息づいていました。それが高度成長期以降の核家族化の急激な進展によって、ずたずたに切り裂かれ、自分さえよければよいといった利己主義を蔓延させ、索漠とした世の中を生み出してしまいました。

リユース文化を大切に育てる

 顔の見える関係、助け合いの精神などを復活させ、人間味溢れる日本を復活させるための一助として、中古品を大切に扱うリユース文化を大切に育てていきたいものです。

(2014年12月7日記)

 
 
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