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IPCC,温室ガス「2100年ゼロに」を提言

IPCC第5次総合報告書

  国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、地球温暖化に関する第5次報告書の仕上げとなる統合報告書を今月初め、コペンハーゲンで開かれた総会で承認し、発表しました。それによると、温室効果ガス(GHG=グリーン・ハウス・ガス)の排出をこれまで通り続けると、気候変動が激しくなり世界的な影響が深刻化すると警告しています。同報告書は、最悪の場合、2100年には地上温度は4.8度、海面水位は82センチ上昇すると推計しています。

温室ガスの排出、50年に半減(10年比)必要

 それを避けるためには、温度上昇を18世紀後半から始まった産業革命以前と比べて、2度未満に抑えることが必要だと指摘しています。そのためには、思い切ったGHGの排出削減が必要です。具体的には50年までにGHGの排出量を現在(2010年)と比べ,40〜70%減らし、2100年にはゼロかそれ以下にすることが必要だとしています。かなり達成困難な目標ですが、これを乗り越えることができれば、人類は破滅につながるような温暖化リスクを回避できると指摘しています。

現状を続ければ、50年に7割も増加

 CO2換算の世界のGHG排出量は11年現在、313億トンです。現状のままで推移すると、50年には7割近くも増え528億トンまで拡大する見通しです。温暖化リスクを避けるためには、50年の排出量は150億トン程度まで削減しなくてはなりません。GHGの排出量削減を目指した京都議定書の約束期間は12年末で終わりました。

20年の削減目標値は紳士協定で達成目指す

 13年以降の排出削減のための新しい国際的枠組みづくりを早急にスタートさせなければなりませんが、各国の利害が複雑、かつ激しく対立し、中々合意が得られません。この間、中国やインドなどの発展途上新興国の急速な経済発展もあり、世界のGHG排出量は加速しています。危機感を強めた国連の気候変動枠組み条約締約国会議(COP)は、次善の対策として20年のGHGの排出削減目標は主要排出国が自発的に提示し、その達成に努力する(紳士協定)ことを呼びかけ、各国の合意を得ました(コペンハーゲン合意)。もちろん紳士協定には法的拘束力はありません。

20年以降の国際的枠組み、COP21(パリ開催)で来年決定へ

 20年以降については、法的拘束力のある新しい削減のための国際的枠組みを発足させる方針で、来年(15年)末、パリで開かれるCOP21で決定をする計画です。京都議定書の時と違って、今回は温暖化対策に消極的だったアメリカや中国が新枠組みへの参加に積極的な姿勢を見せています。京都議定書に参加し削減義務を負った国はEU,日本、ロシアなどですが、これらの国の排出量は世界排出量の30%にもおよびません。これに対し中国とアメリカだけで世界排出量の40%を超えています。

EU、2030年までに90年比40%削減を表明、日本の目標値は?

 主要排出国は、来年3月末までに20年以降の約束案(2030年の目標値)をCOP事務局に提出することになっています。温暖化対策に熱心なEUは早くも2030年までにGHG排出量を90年比40%削減を表明しました。日本は原発事故の影響で、13年末にポーランドのワルシャワで開かれたCOP19で、20年目標の「90年比25%削減」を撤回し、「05年比3.8%削減(90年比3.1%増)」に引き下げ、COP参加国や会場に駆けつけた世界のNGOからひんしゅくを買いました。日本が奮起し野心的な2030年目標値を世界に向け発信できるかどうかに関心が集まっています。

(2014年11月10日記)

 
 
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