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前途多難の中間貯蔵施設

大熊、双葉町建設受け入れへ

 東京電力福島第一原発の事故で出た汚染土壌などを保管する中間貯蔵施設の設置場所がようやく先月、決まりました。国と福島県が2011年8月に協議を始めてから実に3年、難航に難航を重ねた結果、最終的に佐藤雄平知事が大熊、双葉町への建設を受け入れるという苦渋の決断をしました。難航した最大の理由は、迷惑施設を受け入れたくないという地元住民の反対の声が強かったためです。

ニンビーという言葉知っていますか

 「NIMBY」(ニンビー)という言葉をご存知でしょうか。“Not in My Back Yard”の略です。マイバックヤードは、自分の裏庭という意味です。「施設の必要性は認めるが、自分の居住地域につくるのは反対だ」といった意味で使われています。ここでいう施設とは、迷惑施設のことで、たとえば、清掃工場、下水処理場、原発、刑務所など、地域住民にとって好ましくないと思われる施設のことです。

地域エゴと簡単に切り捨てることはできないが・・・

 中間貯蔵施設も、そうした迷惑施設の一つと考えられています。大量の汚染された放射性物質を保管する施設が近くにできれば、地域住民に色々な迷惑がかかることが予想されます。大量の放射性物質を輸送することに伴う道路事情の悪化、何かの事故で、輸送中に汚染土砂が飛散して道路沿いの住民が被爆するケースも考えられます。願わくばそうした迷惑施設はこないで欲しい。そんな住民意識をむげに地域エゴとして批判することはできません。立場が逆になった場合を考えれば明らかです。ニンビーの考え方は日本だけではありません。欧米でもよく同じような問題が起こっています。

最大東京ドーム18個分の除染廃棄物を保管

 施設ができれば、仮置き場に置かれている除染廃棄物の処理が加速化することが期待されます。福島県によると、汚染土を中心とする汚染物質は自治体が設置する仮置き場(626カ所)では足りず、家の庭や駐車場、公園、小中学校の運動場の片隅などに保管されています。施設に運び込まれる汚染土壌は最大2200万立方メートル(東京ドーム約18個分)が見込まれています。

用地買収交渉などはこれからが本番

 ただし、施設受け入れが決まったからといって手放しで喜ぶわけにはいきません。  地権者との用地の買収、地上権など補償額をめぐる難しい交渉は始まったばかりで、これからが本番です。政府は今年度中に用地取得を終え、用地取得が完了した場所に来年初めから一部汚染土を運び込む計画です。

建設費などは総額約1兆円の大工事

 用地取得が終わった後は、直ちに中間貯蔵施設の建設に取り組まなければなりません。今のところ、双葉、大熊両町にまたがる16平方キロの敷地に総額1兆円規模を投入し施設をつくる計画です。貯蔵施設は、運ばれてきた汚染物質を安全に管理する場所を確保すればよいといった単純なものではありません。汚染物質を減容化する施設、水処理施設、多様な放射性物質を汚染濃度によって仕分けするスクリーニング施設などが必要になります。

30年後に最終処分場の適地は見つかるのか

 大量の放射性廃棄物を長期に貯蔵する初めての試みだけに、関連施設が完成し、試運転、さらに日常の管理・運用段階でも想定外の様々な困難が起こってくることが考えられます。また、中間貯蔵施設に保管される汚染物質は、30年後には福島県外の最終処分場に移転させなければなりません。そのための適地が見つかるかどうかもこれからの課題です。受け入れ先が決まったとはいえ、中間貯蔵施設の今後はなお前途多難といってもよいでしょう。

(2014年10月11日記)

 
 
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