ごみ処理費用の増加に対応
この数年、ごみの有料化に踏み切る地方自治体(市町村)がじわりと増えています。私たちが日常生活を通して排出する食品廃棄物や古紙、プラスチック製包装、容器などの家庭ごみは専門用語では一般廃棄物と定義されています。この家庭が排出するごみは、基礎的自治体である市町村が自前の予算を使って収集、搬送、処理(焼却・埋め立て)をしています。各自治体は家庭ごみの排出削減のため、ごみの分別、資源ごみの選別などに取り組んでいます。その結果、ごみの総量は一昔前と比べると頭を打ち、減少気味の自治体も見られます。その一方で老朽化した焼却炉の修理や新設、搬送・焼却コストの上昇、最終処分場(埋め立て処理)不足など様々な問題が発生しています。特に財政難の中でゴミ処理費用の上昇は多くの自治体の悩みの種になっています。
全国市町村の62.4%が実施
その対策として浮上してきたのがごみの有料化です。
環境省調べによると、全国の1741市町村のうち、現在有料化を実施している市町村は1087に達し、実施率は62.4%。半数以上の市町村がごみの有料化に踏み切っています。実施市町村には大きな特徴があります。東京、大阪、愛知などの都市部は比較的実施率が低く50%台以下が目立ちます。逆に人口が少ない地方県では高くなっています。たとえば、鳥取、島根両県では実施率が100%、北海道、香川、高知、佐賀、長崎などの地方県では有料化率は90〜95%に達しています。
大都市の実施率は低く、地方が高い理由
なぜこのような違いが出てくるのでしょうか。様々な理由が考えられますが、都市部では大型焼却施設を備えているところが多いこと。さらに東京や大阪のように湾岸沿いに大きな最終処分場を所有しているところもあり、有料化しなくてもなんとか財政的にやっていけます。これに対し、人口過疎地の地方では、人家が分散しており、ごみの収集、搬送、処理などのコストが割高になってしまいます。さらに一戸建ての多い地方の場合は、家庭ごみの4割近くを占める生ごみは土地に埋めてコンポスト(堆肥)化しているため、ごみの総量は都会ほど多くはありません。焼却施設も小型のものがほとんどです。将来ごみの総量が増えれば新しい焼却施設が必要になりますが、そのための財政資金はかなりの金額になります。地方が有料化でごみの減量に熱心に取り組んでいるのは、逼迫する財政事情と密接に結びついているようです。
国民一人当たりのごみ処理費用は、年間1万4000円程度
それでは、ごみ処理経費はどのくらいかかるのでしょうか。私は千葉県市川市の廃棄物減量等推進審議会の会長を務めており、目下ごみ有料化の問題を審議しています。そこで、市川市の事例を紹介したいと思います。同市のごみ処理費用は年間55億円(予算の4%強)程度です。これを市民一人当たりに換算すると、年間1万3000円程になります。全国平均のごみ処理費用は1万4000円程度なので、市川市は全国平均より1000円程度安いことになります。
導入に当たっては市民の支持や価格設定など事前にやるべきことが多いが・・・
市川市がごみ有料化を検討することになったのは、既存の「ごみ処理基本計画」が近く終了し、新たに10年先を視野に入れた『新ごみ処理基本計画』の策定が必要になったためです。同市では03年から家庭ごみの減量を推進するため、ごみの12分別を導入しました。それから10年後の今日、ごみの総量は2割程度減少しましたが、この数年は横ばい状態です。市川市の場合は、焼却施設の処理能力に限界があるうえ、自前の最終処分場も持っていません。さらに千葉県最大の市、千葉市も今年2月からごみ有料化に踏み切りました。「新ごみ処理基本計画」作成を機に、ごみ有料化を打ち出すチャンス到来と判断したわけです。有料化に踏み切る場合は、事前にやるべきことがたくさんあります。同市のごみ事情を丁寧に説明して市民の支持を得ること、さらに好ましい価格設定、有料化の効果の計測なども丁寧にする必要があります。有料化問題は、市川市のごみ行政の試金石と言えるでしょう。
(2014年8月9日記)