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ニホンウナギ 絶滅危惧種に指定

丑の日を前にバッドニュース、絶滅危惧1B類に指定

 世界の科学者で組織する国際自然保護連合(IUCN、本部スイス)は、6月中旬、絶滅の恐れがある野生生物を指定する最新版の「レッドリスト」にニホンウナギを加えたと発表しました。丑の日を前に残念なバッドニュースです。レッドリストはIUCNが毎年2回改定し、公表しています。「絶滅」、「絶滅危惧」、「準絶滅危惧」など危機の度合いに応じて評価し、指定しています。今回、IUCNはニホンウナギを「絶滅危惧1B」に指定しました。絶滅危惧種は「1A類」と「1B類」、「絶滅危惧U類」に分類されています。「1A類」は、ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの。「1B類」は、「1A類」ほどではないが、近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの。U類は絶滅の危険性が増大しているもの。

乱獲や環境汚染などが原因

 今回IUCNは、ニホンウナギを中間の「1B類」に指定したわけです。生息地が減少していることや過剰な捕獲、さらに環境汚染や海流の変化など複合的な要因が重なって、現状が放置されれば、近い将来、野生のニホンウナギは絶滅する恐れが強いと警告しています。このニュースが伝わると、様々な反応がありました。日本の夏の和食風物詩の代表格はウナギの蒲焼きです。その蒲焼きが「食べられなくなっては大変だ」と嘆く声。7月の「土用の丑(うし)」の日」(今年は7月29日)を直前にしたタイミングの悪い発表だっただけに、ウナギ大好きの多くの愛好家にはかなりのショックだったようです。全国の専門店はこの日に備えて腕を振るいます。夏バテを乗りきるためにも、「蒲焼きを食べて精をつけよう」と張り切っている料理人も素材のウナギが手に入らなくなってはお手上げです。

直ちに食べられなくなるわけではないが・・・

 もっとも、絶滅危惧種に指定されたからといっても、直ちにウナギが食べられなくなってしまう訳ではありません。危惧種指定は法的拘束力を伴うものではありません。ただ、希少な野生生物の国際取引を規制しているワシントン条約が重要な指標として参考にしています。資源量が回復せず,減り続けるようならワシントン条約の対象に指定し、輸出入が規制されます。価格も大幅に上昇してしまうでしょう。

ニホンウナギの生態は長い間謎だらけだった

 ニホンウナギの生態は長年謎に包まれていましたが、日本の学者の地道な研究努力によって最近明らかになりました。日本の川を下ったニホンウナギは、マリアナ海で産卵、稚魚のシラスウナギが戻ってきます。この長旅にはおおくの危険が伴い、日本の川に戻ってくること自体が奇跡に近いと言われています。

年間生産量は3〜6トンまで減少

 それでも、シラスウナギの国内生産量は半世紀前には年間200トン以上もあったそうです。それが毎年減り続け、この数年でみると年間3〜6トン程度と過去最低水準にまで落ち込んでいます。日本に先駆けて、絶滅危機が表面化したヨーロッパウナギの場合は、07年にワシントン条約の規制対象になり、現在EU(欧州連合)ではヨーロッパウナギの輸出を自粛しています。

ウナギの生息環境の保全に知恵を出そう

 対策はあるのでしょうか。クロマグロのように卵からの完全養殖ができればよいのですが、まだ研究レベルで成功した段階で、とても商業ベースには乗りません。基本的には過剰捕獲を控え、ウナギの生殖環境を整え、繁殖して増える速度以下に捕獲速度を抑制することが必要です。日本人の重要な食文化の一翼を担うウナギをいつまでも楽しめるよう消費者、生産者が協力してウナギの生息環境の改善・維持に知恵を出し合いたいものです。

(2014年7月11日記)

 
 
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