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異常気象と併存する時代がやってくる

気候変動に関連した8つのリスク

 多くの科学者の知見によると、温暖化による気候変動の影響を人為的に抑制、制御することが難しくなっているようです。世界の科学者や政府代表で構成する国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が3月末、横浜で開かれ、温暖化に対する最新の報告書を発表しました。それによると気候変動に関連したリスクとして、海面水位の上昇や大洪水の発生、水資源不足、生態系や食料生産への悪影響、熱波による死亡や疾病など8つのリスクが挙げられています。

今の「異常」が将来の「普通」に

 気候変動に関連したリスクはすでに始まっています。この数年日本では異常な猛暑が見られますし、ヨーロッパや中国などではしばしば大洪水に見舞われています。現状のペースで温室効果ガス(GHG=グリーンハウスガス)の排出増が続くと今世紀末には、地表の温度は現状よりさらに2・6〜4・8度上昇すると予測しています。そうなると、8つのリスクが本格的な脅威となり、今の「異常」が将来の「普通」になってきます。

リスクに対する積極的な適応策が急がれる

 低炭素社会の構築など温暖化の原因を取り除くこれまでの努力は、引き続き強化させていかなければなりませんが、それと同時に予想される気候変動の脅威に対する備え、対策(IPCCの報告書では適応と表現)をおろそかにすると、私たちの生存条件が脅かされることになります。

今世紀末の日本の最悪シナリオ、海面水位63センチ上昇、砂丘最大85%消失

 環境省はIPCCの最新シナリオをもとに日本への影響を試算した報告書を作成ました。それによると、このままGHG排出量が増えた場合、今世紀末(2081〜2100年の平均値)には、基準年(1981〜2000年の平均値)に比べ、降雨量が9〜16%増え、海面水位は63センチ上昇、砂丘が最大85%消失すると試算しています。また、熱中症など暑さによる死亡リスクは最大13倍まで高まると予想しています。

生態系に与える影響も深刻、ウンシユウミカンの生息適地、消滅

 生態系に与える影響も深刻です。ハイマツは標高の低い東北地方でほぼ消滅、ブナの潜在生息地域も本州の太平洋側や西日本では9割が消滅してしまうと予想しています。一方、農業に与える打撃も大きなものがあります。ウンシュウミカンの生息適地はほぼ消滅してしまいます。コメは北海道や東北では収量増が見込めますが、関東以西では品質の低下が著しくなるとみられています。近い将来予想される気候変動の悪影響を黙認、放置すれば、私たちの生活リスクは高まる一方です。

治水対策や防潮堤、海岸線から離れた住宅建設などの適応策も

 予想されるリスクに積極的に適応していくための体制づくり、政策展開が必要になります。たとえば、降雨量の増加に伴う洪水の脅威に対しては河川護岸の補強などの治水対策が必要になってきます。海面水位の上昇、それに伴う高潮のリスクに対しては、海岸線から離れた場所に住宅をつくるとか、頑丈な防潮堤の構築が求められます。しかし防潮堤が高過ぎると景観を損ねる、漁業に悪影響を及ぼすなどの批判もあり、気候変動への適応策は地域の特性を十分調査、研究し、地域住民の総意を生かした対策が求められます。

政府に依存するだけではなく、自らできる適応策にも取り組む

 コメの品質低下対策としては、暑さに強い品種の開発などが急がれます。また熱中症で救急搬送される人が増えることに対しては、医者が同乗する救急車(ドクターカー)の導入などのアイデアもあります。ところが、いまのところ、気候変動の悪影響に対する政府の総合的な対策(適応策)は、まだほとんど手つかずの状態です。私たちも政府の対策を待つだけではなく、自らできる対策を洗い出し、リスクを軽減させる努力が求められます。

(2014年5月9日記)

 
 
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