低炭素、脱原発の受け皿としての自然エネルギー
低炭素、脱原発の受け皿になる自然エネルギー(再生可能エネルギー)の普及がグローバルベースで急速に進んでいます。その代表選手が太陽と風力です。世界全体でみると、自然エネルギーの新規発電容量のうち、風力発電がほぼ40%、太陽光発電が30%をそれぞれ占めています。2007年から12年までの5年間でみると、太陽光発電の年率増加率は60%、風力発電は同25%の驚異的な伸びを示しています。
50年には電力供給すべてを自然エネルギーで賄う国も登場
自然エネルギーの開発・普及に熱心なEU(欧州連合)加盟国の中には、50年頃には発電容量の半分以上を自然エネルギーで賄う国が出てきそうです。例えば、脱原発を宣言したドイツでは、電力供給に占める自然エネルギーの割合(12年現在約23%)を30年までに50%以上、50年には80%以上にする目標を掲げています。12年現在、風力だけで、電力供給の約30%を供給しているデンマークは、20年までに風力だけで50%、50年には風力を中心とした自然エネルギーだけで、100%電力供給を賄える計画を進めています。
太陽光発電偏重の日本
日本の場合はどうでしょうか。11年現在、発電容量に占める自然エネルギーの割合は4%弱、太陽光と風力発電に限ると、合わせても1%弱に止まっています。経済産業省が再生可能エネルギーの普及を目的に12年7月から実施した固定価格買取制度(自然エネルギー生産者に有利な価格で電力を買い取る制度)の設備導入状況を見ると、全体の97%が太陽光発電で、風力発電はわずかに1%程度。太陽光発電偏重の姿が浮き彫りになっています。
風力発電は、適地や設置条件が難しい
太陽光発電が一人勝ちの様相になっているのは、全国各地で比較的簡単に設置できるからです。それに比べ、風力発電の場合は、適地が限られていること、設置周辺の環境負荷をチェックする環境影響評価(アセスメント)に時間がかかること、設置コストが高いことなど様々な問題があるためです。自然エネルギーの健全な発展のためには、太陽偏重を是正し、風力をもっと増やし、エネルギーバランスを整えることが求められています。
欧州では洋上風力発電への期待が大きい
このような観点から最近注目されてきたのが、洋上風力発電です。陸地と違って洋上は障害物が少ないうえ、常時一定の風が吹く適地が多く、大型の風力発電設置が可能になるからです。欧州では英国、ドイツ、デンマークなどが洋上風力発電に意欲的に取り組んでいます。英国では20年までに原発30基分を上回る3200万kW(キロワット)の発電能力を洋上風力で賄う計画を進めています。ドイツも22年までに500万kW(原発5基分)分の電力を洋上風力発電に期待しています。
有力な成長産業に育つ可能性も
洋上風力発電は、風車の基礎部分を海底に固定した「着床式」と風車を海に浮かした「浮体式」の2方式があります。欧州では遠浅の北海やバルト海で着床式が進んでいますが、日本では着床式の適地が少ないため、福島県や長崎県の洋上で浮体式の実証実験が始まっています。設置コストは着床式の二倍以上かかるといわれていますが、成功すれば、利用範囲が広く、有力な成長産業に育ち、日本を代表する輸出プラントとしても大きな貢献が期待できます。
日立、出力5000kwの大型洋上風力発電の実証実験
洋上風力は陸上と比べ、発電容量の大きな発電が可能です。既に日本の発電機メーカーは洋上風力発電の実用化にメドを付け、実証実験に踏み出しています。たとえば、日立製作所は、出力5000kwの大型風力発電機の実証実験を年内に茨城県神栖市の沿岸で始めると発表しています。羽根(ブレード)の直径が126m(メートル)、地表から羽根先端までの高さは約150m,重量は700t(トン)もあります。三菱重工とデンマークのヴェスタスは共同で8000kwの洋上発電の実用化を目指しています。
経産省も、洋上風力発電の支援策を検討
経産省も洋上風力の普及を支援するため、陸上の風力から切り離し、陸上より高い価格で買い取る検討を進めています。洋上風力発電の離陸は目前に迫っているようです。
(2014年3月9日記)