地球温暖化、人が原因95%
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、昨年9月末、ストックホルムで総会を開き、地球温暖化の科学的根拠をまとめた報告書(第5次報告書)を発表しました。温暖化の原因は、人為起源の温室効果ガスである可能性が極めて高いことをこれまでで最も強い表現で指摘しています。その確率はパーセンテージで表せば95%で、温室効果ガスが、人間活動の結果もたらされていることは、科学的根拠から見て疑う余地はほとんどないと断定しています。
IPCCは、約5年ごとに最新の報告書を公表
IPCCは、地球温暖化が人間活動によってもたらされているという多くの科学者の疑問、指摘を受けて、1988年に世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)により設立されました。90年に第1次報告書を公表してからほぼ5年に1回、新しい報告書を公表しており、前回の第4次報告書は07年に公表されています。IPCCには、世界各国から多くの科学者、専門家、政府関係者などが参加しており、第5次報告書は、800名を超える執筆者が約4年の歳月をかけて作成したものです。
CO2濃度は、危険領域の400PPMに近づく
今回の報告書によると、世界の平均気温は、1880年から2012年までの約130年間で0.85度上昇、海面水位は1901年から2010年までに19センチ上昇したと認定しています。また大気中の二酸化炭素(CO2)濃度は1750年以降40%増加し、危険領域とされる400ppmに近づいている、と指摘しています。
異常気象も温暖化の進行で加速
温暖化により極端な異常気象が発生していることも指摘しています。たとえば、乾燥地域ではさらに乾燥が進み、日本を含む中緯度地域では、強い雨が頻繁に降るようになったと警告しています。この数年、欧州では洪水が産業や農業に大きな被害を与えており、米国では大型ハリケーンが頻繁に発生、日本でも異常な猛暑に見舞われ、竜巻で死傷者が出るなどの異常気象も、温暖化の影響が大きいと指摘しています。
今世紀末、最悪の場合、4.8度も上昇
この調子で、温暖化が進むと今世紀末頃の地球はどうなっているのでしょうか。
報告書によると、温暖化対策が功を奏した場合は、今世紀末の地表の温度は、現状より0.3度程度の上昇にとどまるが、最悪の場合は4.8度まで上昇すると予想しています。対策がうまくいかず、過去と同じ様にCO2の排出量が増加すれば、最悪のコースをたどることになります。専門家の多くは、この最悪ケースに陥る可能性がもっとも高いと指摘しています。4.8度上昇なら、生態系に与える影響は深刻で、食糧危機、水不足、さらに水没による居住環境の喪失などによる環境難民が急増し、国際的な混乱が起こる恐れがあります。
海面水位は、今世紀末には今より26〜82センチ上昇
一方、今世紀末の海面水位の上昇は26センチから最悪82センチと予想しています。海面水位が上昇するとどのような影響が出てくるのでしょうか。文部科学省が海面水位59センチ(第4次報告書)上昇した場合の水没域を推計したところ、世界の国土面積の0.79%から0・80%が水没するという結果になりました。また環境省などの推計によると、東京湾、伊勢湾、大阪湾周辺のゼロメートル地帯は、水位が60センチ上昇すると、ゼロメートル地帯の面積と人口は1.5倍に増えると指摘しています。
日本の2020年の排出削減目標、2005年比3.8%減、90年比3%増
温暖化による将来リスクを避けるためには、温室効果ガスの排出量をグローバルベースで大胆に削減していくことが望ましいわけです。だが、各国の利害が複雑に対立しており、中々合意づくりが進んでいません。主要国は2020年を目標にした温室効果ガスの排出削減目標を明らかにしています。EU(欧州連合)は、90年比で20〜30%削減、アメリカは3%程度削減、ロシアは15〜20%削減といった具合です。これに対し、日本は05年比3.8%減(原発稼働ゼロを前提)を発表しています。これは90年比約3%の増加になります。EU、アメリカ、ロシアの主要国が、いずれも90年比マイナスを掲げている中で、日本だけがプラスになっています。
原発依存の大幅削減目標、福島原発事故で破綻
実は、11年3月の福島原発事故が起こる前の日本は、20年の温室効果ガスの排出量を90年比で25%削減する方針でした。25%削減の前提として、政府は20年までに9基の原発を新増設し、原子力の発電比率を40%以上(事故前は約26%)にすることで25%削減を達成する計画でした。しかし、計画策定後福島原発事故が起こり、25%削減が物理的に困難になってしまいました。このような理由があったにしても、他の主要国が90年比マイナスを掲げている中で、日本だけがプラスでは、他国から批判を招きかねません。
90年比マイナスの目標を掲げるべきだ
日本の省エネ技術は日進月歩で進んでいるし、太陽光発電などの再生可能エネルギーの比率を現状以上に高めることも可能です。11年の原発事故後、国民、企業が夏場の電力不足を節電で乗り切った経験もあります。日本は原発に頼らなくても、90年比マイナスを目標に掲げ、その実現に向けさらなる努力をすることが望まれます。
(2013年11月8日記)