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原発・廃炉ビジネスのすすめ

テレビ東京で、廃炉ビジネスについて持論を述べる

 テレビ東京が毎週土曜日午前11時半から放送している「田勢康弘の週刊ニュース新書」という番組(10月5日放送)で、廃炉ビジネスについての特集があり、ゲスト出演し、持論を述べる機会がありました。11年の3.11東電福島原発事故以降、日本人の原発についての見方は大きく変わりました。原発が安定した電力を提供してくれるのはありがたいが、一度事故を起こすと取返しがつかないような大惨事を招くことを明らかになりました。大地震国の日本では、今後大地震が発生しやすい時代を迎えるので、原発は、危険が大き過ぎる、という声が国民の大多数になっています。

事故前は、原子力ルネサンス時代が喧伝された

  私もその一人で、これからは原発の建設よりも、40年の寿命を経て、廃炉しなければならない原発が急増してくるので、「廃炉ビジネス」を日本の成長産業に育てるべきだ、と思っています。今回は、時間の制約で、テレビでしゃべり切れなかった分も含め、なぜ私が「廃炉ビジネスのすすめ」を提唱しているかを述べてみたいと思います。原発事故前までは、これからは「原子力ルネサンス」の時代がやってくると経済産業省や電力会社、原子炉メーカーなどは張り切っていました。当時,54基の原発が稼働していましたが、20年までに9基、さらに30年までに5基新設し、30年には電力の半分以上を原発で賄う構想が進められていました。原発1基(出力100万kw)の建設費は約5000億円と見込まれているので計画通りいけば、7兆円規模の大きな市場が出現するはずでした。

原子炉メーカーは原発輸出に活路を求めているが・・・

  ところが、突然の原発事故で、この計画は白紙に戻ってしまいました。特に原発建設の中核を占める日立、東芝、三菱重工の3大原子炉メーカーは、将来の増設を見込んで、外国の原子炉企業を買収するなど積極的な投資活動を展開してきました。ところが原発の新設は当面国内では見込めなくなってしまいました。そこで、3大メーカーは、海外に活路を求め始めました。政府も積極的に支援しています。

事故が起こればリスクが大きく、企業の存続が危うくなる

 しかし、日本企業が中心になって海外に原発を建設することは、リスクが大き過ぎます。原発の受注国は、新興国や発展途上国です。地震や津波などの他に、政情不安やテロ活動などで原発事故がいつ起こるとも限りません。 万一深刻な事故が発生すれば、膨大な損害補償を求められ、企業倒産に追い込まれてしまう可能性も否定できません。3大原子炉メーカーの売り上げに占める原発関連事業の割合は1割弱程度です。売り上げの1割にも満たない危険な事業のために、企業の浮沈につながるようなリスクを長期的に背負うことは、企業のリスクマネジメントからいえば得策ではありません。国内もダメ、輸出もダメということになると、原子炉メーカーは、どうしたらよいでしょうか。

廃炉ビジネスのメリットは大きい

 そこで、私は「廃炉ビジネスのすすめ」を提案しています。今、世界で稼働している原発は約450基。このうち9割近く、約400基が今後20年以内に40年の寿命を迎え、廃炉される予定です。廃炉にかかる費用については、色々な試算がありますが、少なくても1000億円は必要です。この前提に立てば、廃炉ビジネスの市場は、40兆円の大市場になります。日本企業が廃炉ビジネスに取り組むメリットはいくつもあります。

第一に事故を起こした東電福島原発4基は、現在廃炉作業中です。この作業を通して、廃炉ビジネスに必要な様々な技術、たとえば放射性物質の管理、原子炉の安全な取り出し、使用済み核燃料の処理方法、さらに遠隔操作可能なロボット開発など事故が起きなければ分からなかったような様々な対応策を現場から学ぶことができます。 第二に日本の原子炉メーカーは、放射性物質の取り扱いについて高度で多様な管理技術を保有しています。その技術は原発建設だけではなく、廃炉にもそのまま8割近くが利用できるそうです。

日本を支える産業群を活性化させる

 第三に廃炉ビジネスは、新しい日本の発展を支える産業群を活性化させることができます。廃炉ビジネスに関連する産業としては、電力、原子炉、建設、一般機械、ロボット、計測機器、センサー、電子機器、化学繊維、医療、輸送、廃棄物処理など多様な分野が考えられます。これらの産業の協力によって廃炉ビジネスモデルが完成すれば、中国や韓国などが簡単には真似できないため、国際競争力の強化につながります。それでは、廃炉ビジネスモデルを完成させるためには、どのような対策が必要でしょうか。

オールジャパンで廃炉ビジネスモデルをつくれ

 モデル作りに当たっては、巨額の資金が必要ですし、しかも短期間で完成させなければなりません。原子力についてのさらに高度の科学的知見も求められます。そのためには、産官学の全面的な参加と協力が必要です。個別企業の努力ではとても不可能です。「オールジャパン」の国家プロジェクトとして推進すべきです。省庁間の縦割りと非効率な運営を排除するため、プロジェクトリーダーは、首相が務める必要があります。オールジャパンによる廃炉ビジネスモデルが完成すれば、世界貢献と日本経済の活性化という二つの目標を同時に達成することが可能になります。

(2013年10月6日記)

 
 
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