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世界の自然エネルギーの普及状況はどうなっているのか

クリーンで再生可能なエネルギーへの期待高まる

 温暖化の原因になる化石燃料、一度事故を起こすと深刻な放射能汚染を引き起こす原子力発電に依存しない新しいエネルギーへの転換が急がれます。そのためには、再生可能でクリーンなエネルギーの開発、普及が必要です。太陽光発電や風力発電のように再生可能でクリーンなエネルギーのことを日本では新エネルギー、再生可能エネルギーなどと呼んでいます。これに対し、欧米などでは自然エネルギーと呼ぶケースが多いようですが、もちろん同じ意味で使っています。

本格的な取り組みは、リーマン・ショックが契機

  今世紀に入ってから、多くの国が自然エネルギーの開発・利用に積極的に取り組んでいます。特に08年秋のリーマン・ショックで、深刻な世界同時不況が発生しました。この不況から脱出するため、日米欧などの先進工業国だけではなく、中国などの新興国も含め、多くの国が経済のグリーン化による新規需要の創出、拡大を掲げ、景気回復への取り組みを強化しました。自然エネルギーの本格的な開発・普及に各国が真剣に取り組むようになったのも、この時からであり、まだスタート段階にあるのが現状です。

「自然エネルギー世界白書12」から現状を見る

  それでは、今世界で、自然エネルギーは、どの程度普及しているのでしょうか。どこの国がどのような自然エネルギーに力を入れているのでしょうか。最近発表になった「自然エネルギー―世界白書12」を参考にしながら、世界の自然エネルギーの現状を見てみましょう。この白書は、自然エネルギーに関心を持つ世界の科学者、政策担当者、NPO、大学などの研究機関、国連などの国際機関などに所属する多様な人々で構成する「21世紀のための自然エネルギー政策ネットワーク(REN21)によってまとめられたものです。

世界のエネルギー最終消費の16.7%を供給

 まず、自然エネルギーの現状ですが、2010年には世界の最終エネルギー消費(約88億石油換算トン)の16.7%を自然エネルギーが供給しました。このうち、薪などのように直接燃やして使う伝統的なバイオマスの割合が8.5%、太陽光発電や風力発電のように近代的な技術を使った自然エネルギーの利用は8.2%を占めています。我々が再生可能エネルギー、自然エネルギーなどという場合のエネルギーは、もちろん後者のことを指しています。近代的な自然エネルギー(8.2%)のうち、バイオマス、太陽熱、地熱などの熱利用が3.3%、水力発電3.3%、風力、太陽光、バイオマス、地熱などの発電が0・9%、エタノール、バイオディーゼルなどのバイオ燃料が0.7%などとなっています。また、自然エネルギー産業分野で、直接的、間接的に働いている人は世界全体で約500万人に達すると推計しています。

近代的な自然エネルギー供給量、8.2%をどう見るか

 この数字を見て、皆さんはどのように思われるでしょうか。近代的な自然エネルギーの最終エネルギー消費に占める割合をどう評価するかで当然、自然エネルギーへの期待度は大きく違ってきます。「なんだ、1割にも達していないのか、余りに低過ぎる」とがっかりしてしまう人が案外多いかもしれませんね。逆に、この数字は高くはないが、今世紀の入り口ではゼロに近かったことと比べれば、わずか10年程度の間に8.2%まで拡大したことは大きな成果だ。将来へ向け、自然エネルギーは大いに期待できると楽観的に考える人も多いのではないでしょうか。石炭や石油のような化石燃料は、産業革命以降、約250年の歳月をかけて今日のような使い勝手の良いエネルギーとして利用されてきました。原子力発電にしても、戦後60余年の歳月を経て今日に至っています。

楽観論に立てば、2050年頃には、50%以上の供給も可能

 自然エネルギーがわずか10年そこそこで、最終エネルギー消費の8・2%を供給できたということは、この分野での活発なイノベーション(技術革新)や開発・普及のための政策上のバックアップ、さらに大きな潜在需要などを考慮すれば、2050年頃にその供給を50%以上まで高めることはそれほど難しいことではないと思います。

11年の世界の新規発電容量の約半分は、自然エネルギーが占めた

 自然エネルギーについては、現状の供給シェアで見るだけではなくは、伸び率にも注目する必要があります。たとえば、2011年の世界の新規発電容量(280GW=ギガワット)のうち、約半分が自然エネルギー分野の投資で賄われました。その内訳は、風力発電が約40%、太陽光発電同30%、水力発電同25%で、この3部門で全体の95%を占めています。同年の世界の自然エネルギー発電容量は、前年比8%増で、世界全体の発電量の25%以上を占めています。

欧州では、発電容量の3割を自然エネルギーが供給

 地域別に見ると、自然エネルギーの活用に熱心な欧州では、同年の新規発電設備容量の71%以上を自然エネルギーが占め、発電容量全体の31.1%を供給しています。太陽光発電は新規容量の47%を占めています。

太陽光発電世界1はドイツ、風力発電は中国

 一方、国別では、太陽光発電稼働容量〈11年現在〉の1位はドイツ、2位イタリア、3位日本。風力発電設備容量の1位は中国、2位米国、3位ドイツなどとなっています。

(2013年8月10日記)

 
 
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