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化粧品開発が、動物実験に支えられてきたこと、ご存知ですか

資生堂、動物実験の廃止に踏み切る

 3月1日の日経朝刊に「資生堂、動物実験の廃止、来月から」という一段見出しの小さな記事が載っていました。 - EU(欧州連合)は、03年に化粧品に関する動物実験の禁止を定めた法規制を発効させました。発効から10年の猶予期間を経た今年3月11日以降は、動物実験した製品や動物実験済みの原料を配合した製品の販売が全面禁止になりました。 - 売り上げ全体に占める欧州の割合が12%と高い資生堂は、10年3月に動物実験を廃止する方針を明らかにしており、今回正式に廃止を決めた、という内容です。

動物実験反対で大躍進した英化粧品会社、ザ・ボディショップ

  この記事を見て、イギリス・サセックス州の化粧品会社、「ザ・ボディショップ」のことを思い出しました。もう30年近くも前のことです。 アニータ・ロディックという女性起業家が天然原料をベースとしたオリジナル化粧品を製造、販売する会社を設立しました。企業理念として、「わが社は化粧品の動物実験に反対する」を大きく掲げました。これが動物愛護家の多い欧州の女性たちから熱烈に支持、歓迎され、急成長し、ロンドン証券市場に上場するまでになりました。世界50カ国以上に2000店舗を持つ大企業に発展しました(同社は06年に世界最大のフランスの化粧品会社ロレアルに買収された)。

動物愛護家の多いヨーロッパが先行

 資生堂の動物実験廃止のニュースを見て、あらためて同社のことを思い出し、日本ではまだ、動物実験が行われていたことを知りました。化粧品の動物実験については、スイス、オーストリア、イギリス、ドイツ、オランダなどがすでに禁止していますが、今回の決定により、EU全域で禁止が決まったことになります。一方アメリカでは動物実験に関する直接の法規制はなく、施設の登録や倫理委員会の設置を義務づけています。日本も直接の法規制はありません。

人を美しくする化粧品づくりの裏側で残酷な動物実験が行われている

 シャンプーやリンス、化粧水、乳液、口紅、ファンデーションなどの化粧品を開発するために、ウサギやモルモット、マウス、ラットなどの動物が使われています。ウサギの目にシャンプーを流し込んだり、マウスやラットの肌に傷を付け、クリームを塗ったり、口紅を強制的に飲み込ませたり、数々の実験が行われ、用済みになった動物は殺されます。人を美しくする化粧品づくりの裏側でこのような残酷な動物実験が行われていることに憤ったヨーロッパの動物愛護家が中心となり、動物実験反対キャンペーンを長年続けてきた結果、今回の動物実験禁止のEUベースの法規制が成立したわけです。

日本でも動物実験反対のキャンペーン盛り上がる

 今回の資生堂の動物実験廃止の決定も、EU規制が直接の引き金になったことは確かですが、同時に「化粧品の動物実験反対キャンペーン」を根気強く推進してきた動物愛護のNPOグループの地道な活動があったことも指摘しておきたいと思います。このことを知ったのは、企業の社会的責任(CSR)を考える雑誌、「オルタナ」を発行している知人の編集長から送られてきたメールマガジン「動物実験廃止で資生堂を動かした女性たち」(編集長コラム)です。
コラムによると、過去18年間にわたって資生堂など日本の大手化粧品会社に「動物実験の即時廃止」を働きかけてきた市民運動の存在があったという。 デモ行進を目撃した編集長は次のように述べています。「プラカードやのぼりはピンク色で統一され、ウサギの着ぐるみや「かぶりもの」を身に着けた人もいた。そして、何よりも参加者の大半が若い女性たちだったのが印象的だった。女性らしさに包まれた雰囲気の中で、具体的な企業名を挙げた強烈なメッセージが強く感じられた」
http://www.alterna.co.jp/10653/

資生堂、動物実験反対のNPOなどと円卓会議で対応検討

 資生堂のホームページでも、動物実験廃止を目指し、10年以降,「NOP法人動物実験の廃止を求める会(JAVA)」、「動物との共生を考える連絡会」など様々なステークホルダーを招いて、円卓会議を度々実施してきたことを明らかにしています。この円卓会議に参加した様々なステークホルダーの声を受け入れて、化粧品最大手の資生堂が動物実験廃止のファーストランナーになったことは歓迎できます。 一般に難病治療のための新薬開発などに当たっては動物実験が必要な場合があります。だが、化粧品の場合は、動物実験に代わる代替法が色々研究されています。

動物実験の代替法、急速に進歩

 これまで、動物実験は化粧品の毒性チェックのために使われてきました。代替法としては、たとえば、試験管の中で毒性を調べる「イン・ヴィトロ(in vitro)」試験法が急速に実用化しているそうです。ヒトの皮膚の培養細胞やカボチャなどの植物由来タンパク繊維網を利用して、化学物質の毒性を試験管の中で調べる方法です。人間の細胞を使って人間の安全性をチェックするので、動物実験よりも安心感があります。この他、コンピューター・シミュレーションによる安全性チェックなど様々な代替法が研究、開発中だそうです。日本でも、代替法の積極的な活用で、化粧品の開発に当たって動物実験廃止の動きがさらに強まるとよいですね。

2013年3月19日記

 
 
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