半世紀ぶりの干ばつ、米直撃
約半世紀ぶりと言われる大干ばつが、米中西部の穀倉地帯を直撃し、トウモロコシや大豆の生産に大きな打撃を与えています。
トウモロコシや大豆は、米国が世界最大の生産国であり、日本の酪農は、飼料用のトウモロコシや大豆の大部分を米国に依存しています。干ばつで飼料用のトウモロコシや大豆の生産が激減すれば、価格が暴騰し酪農家は大きな被害を受けることになります。最悪の場合、飼料の入手が困難になり、日本の酪農が壊滅的な打撃を被ることさえ想定されます。
もちろん、今の段階では、飼料用のトウモロコシなどの輸入がストップしてしまうような事態は、避けられそうですが、酪農家にとっては頭痛のタネです。
全米の62%の農家が干ばつ被害
米農務省の干ばつ影響報告によると、全米の62%の農家が今回の干ばつの影響を受けているそうです。作物別では、トウモロコシが88%、大豆は87%が被害を受けています。トウモロコシの主産地であるイリノイ州やミズーリ州では、広大なトウモロコシ畑のいたるところで、トウモロコシが茶色に変色し枯れ果て、地面に倒れている姿が、テレビニュースで何度も映し出されたこともあるのでご記憶の方もあると思います。
米中西部は、7月に入ってからほとんど雨が降らず、降ってもお湿り程度で、トウモロコシの8割が枯れており、今年の収穫は絶望的だとの観測が強まっています。
ロシアの干ばつも深刻
今年、干ばつに見舞われたのは米国だけではありません。米国を追いかけるように、ロシアやウクライナなどの穀倉地帯でも干ばつの影響が広がっています。ロシア政府によると、同国の今年の穀物年度(7月〜翌年6月)の穀物生産量は、政府の当初見通し、9400万トンを大きく割り込んで、前年度比、約15減の8千万トン以下にとどまると下方修正しました。ウクライナでも干ばつ被害で、「800万トンの穀物が失われた」〔アザロフ同国首相〕と指摘しています。
穀物相場は記録的な高騰、トウモロコシは10ドル台が視野に
シカゴ商品取引所では、干ばつが深刻化した6月以降、トウモロコシの先物価格が急騰しており、7月末には1ブシェル(約25.4kg)当たり、8ドル台、大豆も同17ドル台に乗せ、これまでの最高値(トウモロコシ約8.3ドル、大豆同17.8ドル)に迫っています。世界の穀物収穫量が確定する秋口には、さらに穀物価格が暴騰し、トウモロコシは10ドル台を視野に入れる必要があるとの観測が強まっています。
大干ばつ、この数年頻発に発生
大干ばつは、世界の穀倉地帯でこの数年、頻繁に起こっています。たとえば、2年前の10年には世界第4位の小麦輸出国のオーストラリアの穀倉地帯が干ばつに見舞われ、小麦の生産量が減少しました。通常820万トン程度の収穫が期待できるのですが、この年は700万トン程度と2割弱も生産量が落ち、世界の小麦価格の上昇をもたらしました。
中国では電力不足で経済活動に支障
昨年の11年には、中国中部が、やはり50年ぶりの大干ばつ見舞われ、貯水池は枯れ、米の収穫量も激減しました。同国最大の長江の水位は、過去50年間の平均水位の40%以下に下がってしまったそうです。上海や重慶など中国中部の主要都市では、水力発電能力が低下し、深刻な電力不足に陥り、経済活動に深刻な影響を与えたそうです。
穀倉が乾燥地帯を好むのも一因
世界の穀倉地帯が、近年集中的に干ばつの被害を受けるようになったのは、小麦やトウモロコシなどの穀物が比較的乾燥した地域を適地としていることと関係しています。乾燥地帯は太陽の光が強いため、光合成が活発で、穀物の生育が早く、収穫量が高くなるからです。水が少ない土地柄のため、雨が降らず日照りの期間が長くなると逆に水不足の影響で収穫が激減するという大きな欠点があります。 収穫量は増やしたいが、ちょっと水不足になると、逆に収穫量が減ってしまうという危険と背中合わせなのが、世界の穀倉地帯の特徴と言えるでしょう。
地球の自動調整メカニズムに障害
この数年、世界の主要な穀倉地帯のどこかで、ほぼ毎年のように大干ばつが発生している原因については本当のところよくわかりません。地球が本来備えている自動調整メカニズムが機能不全に陥っていることが原因ではないかと考えられます。たとえば、地球温暖化の影響です。温暖化によって、地球全体の気流や海流の流れに異変が起こり、それが干ばつを引き起こし、穀倉地帯を襲っているという見方です。
森林などの生態系の破壊が急速に進んでいることも指摘されています。生態系は気候調整や保水などの調整機能を備えていますが、その機能が低下していることも、干ばつの原因の一つに挙げられています。
健全な地球の営みを回復させる
いずれにしても、短期間に人類が地球を酷使してきたことが原因で、干ばつなどの異常現象が頻繁に起こるようになったことは事実のようです。
干ばつ→食糧難→栄養不足→食糧争奪戦争などの負のサイクルを回避するためにも、私たちは健全な地球の営みを回復させる努力をもっと強化しなければならないと思います。
2012年9月1日記