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自転車のマナーを考える

国民の2人に1人が所有

 人々の健康志向やCO2(二酸化炭素)を出さない便利な乗り物として、自転車がブームになっています。自転車産業振興協会の調べによると、現在自転車の保有台数は、約6900万台に達しています。10年前と比べると、600万台近くの増加です。単純計算すれば、国民の2人に1人が自転車を持っていることになります。

大震災機に自転車族が増える

 東京の場合は、特に東日本大震災の影響で帰宅困難者が続出しましたが、それを機に自転車利用組みが急増しました。ビジネス街の大手町や丸の内周辺の企業に勤めている友人の何人かも、自転車族になり、自宅から小一時間かけて、職場に通っています。少し早めに自宅を出て、ひと汗かいて職場に行き、ビジネス用の背広に着がえるライフスタイルはとても新鮮で気分は壮快だそうです。

自転車と歩行者の衝突事故が目立つ

 自転車が増えると、当然ですが自転車にかかわる事故も増えます。特に東京都区内での事故が目立っています。警視庁によると、都内の自転車にかかわる事故は、年間約2万1000件ありますが、これは交通事故全体36.2%を占めています。全国平均の自転車事故の割合は20.9%なので、都内の自転車事故が突出していることが分かります。
 自転車事故のうち、最近目立っているのが、自転車と歩行者の衝突事故です。全国で昨年2760件の事故が発生していますが、その約3分の1に当たる1039件が都内で起こっています。

自転車は車道を走るのが原則です

 警視庁では、事故原因の多くが自転車利用者のマナー・ルール違反にあるとして、自転車運転の正しいルール・マナーの周知徹底を図る方針を決めました。同庁によると、自転車利用者の多くが、「自転車は車両の一種」であることを知らないそうです。道路交通法では、自転車を軽車両と位置付け、原則として車道通行(車道の左側)を義務付けています。走行に当たっては、酒酔い運転禁止、2人乗り禁止(6歳未満の子どもを除く)、夜間はライトを点灯する、ブレーキを整備するなどが義務付けられています。
 自転車は四輪車と違って歩道を走ることも認められています。その場合は、真中よりも車道側を走る、すぐに止まれる速度で走る、歩行者の通行に邪魔になる場合は止める、などのマナーが求められています。

走行中の携帯電話使用や傘差し運転も禁止

 このほか、走行中の携帯電話使用、傘差し運転なども禁止されています。
 これだけのルールやマナーを守れば、自転車と歩行者の事故は、大幅に軽減するはずです。ところがこれまで、自転車走行時のルールやマナーは、あまり守られてこなかったようです。

歩道を猛スピードで走る自転車族に不快感

 3か月ほど前のことですが、私も自転車のルールを守らない利用者に不愉快な思いをさせられました。皇居を一周する歩道があります。大手町や丸の内周辺のサラリーマンや運動好きの人たちが約4kmの皇居一周マラソンを楽しんでいます。
 この歩道の真ん中を秋の気配が濃くなった皇居の景色を眺めながらゆっくり歩いていると、突然、後ろから3人組の自転車が猛スピードで迫ってきました。振り向くと、先頭を走っていた男が、「こら、そこどけ、もっと端っこを歩け」という怒声を発して、私の脇すれすれを走り抜けて行きました。あのスピードで跳ねられたら大怪我をしたのではないかと思います。歩道は歩行者優先です。いつでも止まれるような速度で、遠慮しながら走るのがマナーなのに、まるで自転車専用道のように思い込み、歩行者を邪魔者扱いする神経には呆れてしまいました。

罰則強化、飲酒運転は5年以下懲役、100万円以下の罰金

 歩道での自転車事故を防ぐため、警視庁では悪質な違反者に対しては、今後厳しく取り締まる方針です。夜間にライトを付けていない自転車、猛スピードで歩行者に恐怖を与えるような走行、競技用自転車のようにブレーキなしの走行などは、厳しく法律で罰する方針です。具体的には、夜間にライトを付けていない、ブレーキを付けていないなどの制動装置不良の運転に対しては5万円以下の罰金が課せられます。運転中の携帯電話使用、傘差し運転も5万円以下の罰金です。 飲酒運転は、5年以下の懲役または100万円以下の罰金と重く、信号無視や一時停止違反は3カ月以下の懲役、または5万円以下の罰金です。2人乗り違反に対しても、2万円以下の罰金が課せられます。

専用の自転車道があればよいのだが・・・

 自転車事故を防止するためには、罰則強化による取り締まりだけでは十分ではありません。中長期的視点に立てば、専用の自転車道を全国的に整備し、歩道と自転車道、車道を区別した道路整備が必要になります。しかし、短期的には、間に合いません。だが、自転車利用者が走行時の交通安全ルールやマナーをしっかり守って運転すれば、衝突事故はかなり減らすことができるように思いますが、いかがでしょうか。

2011年12月19日記

 
 
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