2100年には100億人を超えると推定
国連人口基金は、「世界人口が10月末に70億人に達した」と発表しました。現状で推移すると、50年には93億人、2100年には100億人を突破すると指摘しています。世界人口は過去100年の間、急増し続けています。1900年の世界人口は、約16億5千万人でしたが、50年後の1950年には25億人を突破、さらに50年後の2000年には61億人に達しました。100年間に約3.7倍の増加です。今世紀に入ってからも、増加テンポは多少落ちるものの増加を続ける見通しです。人間だけが異常繁殖を続ける姿は、異常としかいうほかありません。
飢餓人口は、今でも9億人を超えている
地球は有限です。有限な地球の上に、人口だけがどんどん増え続けて果たしてうまくやっていけるのでしょうか。ちょっと考えただけでも、様々な疑問が起こってきます。
まず第1に、増え続ける世界人口を養っていけるだけの食糧は十分確保できるのでしょうか。国連食糧農業機関(FAO)が昨年秋、発表した2010年の世界の飢餓人口は9億2500万人に達しています。飢餓人口とは栄養不足人口のことです。FAOの報告書によると、世界の飢餓人口の98%が発展途上国で暮らし、中国とインドだけで全体の40%を占めているそうです。また栄養不足が原因で6秒に1人の子供が死んでいると指摘しています。飢餓人口は食糧不足が原因です。
農地はすでにぎりぎりまで開発されている
現在、食糧を生産する農地はぎりぎりまで開発されており、今後増え続ける人口を賄うための農地はあまり残されていなません。単収(耕地面積当たりの収穫)の引き上げにも限界があります。しかも、今後増加する人口のほとんどは発展途上国での増加です。人口増加は食糧さえ満足に得られない貧困層をさらに拡大させかねません。
水不足も深刻だ
第2に、水不足も深刻化してきます。人口増加は一人当たりの水(淡水)消費量を増加させますが、淡水の最大の供給源である地下水は食糧増産や工業用水のため過剰揚水され枯渇気味です。水の汚染も深刻です。WHO(世界保健機関)によると、現在世界で安全な水を飲めない人の数は11億人を超えており、世界人口の約6分の1を占めています。またトイレなどの適切な衛生施設を利用できない人は、26億人にも達しているそうです。水事情は、人口増加によって、さらに悪化してくると見られます。
エネルギー問題も大きな問題だ
第3にエネルギー不足も大きな問題になってきます。バングラデッシュなどの南アジア諸国やアフリカのサワラ砂漠以南の国々では、炊事用の燃料として、今でも薪(たきぎ)を主に使っています。人口増加によって、薪需要が拡大しているため、周辺の森がどんどん縮小しています。人口増加に伴う森林伐採で、生物多様性が失われ、伐採された後の土地は荒廃し砂漠化してしまいます。
人口増加を支えるための経済活動も当然拡大してきます。それに伴って、石炭、石油などの化石燃料の消費も多くなり、大量のCO2(二酸化炭素)が排出され、地球温暖化を加速させてしまう心配があります。
マスコミ報道は危機感がなさすぎる
70億人の人口は、健全な地球の維持のためにはすでに限界に近い状態だと思います。自然環境の破壊や森林の縮小、飢餓人口の増加や地下水の枯渇化現象などは、地球が発する「赤信号」といえるでしょう。しかし、国連人口基金の発表を報じた日本の新聞、テレビなどのマスコミには、人口増加に対する危機感がきわめて乏しかったように思います。貧者だけを増やしかねない世界人口の増加は、世界の政治的不安定を加速させ、健全な経済発展を損なう大きな要因になると思います。マスコミは、この点について、もっとしっかり報道すべきです。
レスター・ブラウンは70億人限界説
アメリカの環境学者のレスター・ブラウン氏は、「フードセキュリティ」(ワールドウォッチジャパン出版)という著書の中で次のように指摘しています。
「人間の尊厳を大切にする人々に許される唯一の選択肢は、子どもが二人という家族形態に早々に移行し、世界人口を現在予測されている90億人〈2050年〉ではなく、70億人近くで安定させることだ・・・。長期的に、地球は一家族当たり子どもを二人以上支えることはできない」と。ブラウン氏は、食糧問題の専門家でもあり、食糧の安定供給という視点からも、地球が養える人口は、約70億人が限界だと指摘しているわけです。その70億人はすでに現実になってしまいました。
日本は、新しいモデルを示せ
世界的な人口増加に背を向けるように、日本はこれから急速に人口が減少していきます。人口減少は、経済を衰退させ、その国から元気を奪ってしまうと言われています。果たしてそうでしょうか。日本は、人口減少の中で、経済の活力を維持し、豊かな生活を営むための実験をなんとしても成功させなくてはなりません。その成功モデルを世界に発信し、これ以上の人口増加がもたらす地球の危険に警鐘をならし、地球と折り合える人口の下で、持続可能な社会を築くために貢献していくべきです。それがこれからの日本に課せられた新しい役割ではないでしょうか。
2011年11月11日記