プロフィール
出版・刊行物
B-LIFE21
- 環境コラム
環境樹について
 
 

節電時代を追い風にLED照明、急ピッチで普及

家電量販店の目玉商品、LED電球

 節約意識の高まりを背景にLED(発光ダイオード)照明の普及が急ピッチで進んでいます。家電量販店に行くと、LED電球を目玉商品として陳列しているところが増えています。成長商品のため、新規参入企業や中国や韓国などの外国製品も登場して、販売競争も激化しています。昨年と比べて価格もかなり低下しているようです。

電球形蛍光管を上回る

 白熱電球と比べ、消費電力は5分の1から6分の1程度と少なく、寿命は約40倍と長いので、価格は白熱電球よりも数倍高いが、省エネ製品として人気を呼んでいるようです。調査会社のGfKジャパンによると、家庭用電球形照明に占めるLED電球の割合は、09年10月にはわずか3・2%に過ぎなかったのが、約1年後の10年12月には22%に達し、今年4月には29・6%まで上昇し、初めて電球形蛍光管を上回りました。

LED電球のシェア、近く50%突破の勢い

 さらに5月末には37.2%までシェアを高め、白熱電球(43%)に迫っています。東日本大震災後、消費者の節電意識が高まったことが大きく影響しており、家電業界では、夏場以降、価格はさらに低下し、LED電球のシェアは50%を超え、白熱電球を上回るとみています。LED照明は、家庭用電球の他に、携帯用の懐中電灯、自転車の前照灯、誘導灯(建物内の非常口、避難経路などを示す表示灯)、交通信号など多方面で利用されています。

イカなどの漁火(いさりび)にも利用

 変わったところでは、サンマやイカ漁などで使う集魚灯(漁火)にも利用されています。これまで、集魚灯として白熱灯やメタルハライド灯が使われてきました。これらの集魚灯に使う電力は漁船のエンジンで発電してきました。このため燃料である重油は、運航用が4割程度で、約6割が集魚灯のために使われてきました。

電力消費量の節約に大きな効果

 この集魚灯の照明をLED照明に切り替えると、電力消費はメタルハライド灯の5%程度で済むので、大幅なエネルギーの節約になります。130〜150トンクラスの漁船の場合、魚灯をLED化すると、1000万円程度の費用がかかりますが、壊れた電球の交換などにかかる維持費やエネルギー節約分などを考慮すれば、数年で元がとれるそうです。

照明の色の違いで魚種を見分ける

 集魚灯としてLED照明を使うもうひとつのメリットとしては、漁獲対象に適した波長帯(色の変化)を使うことで、収穫量を増やすことが可能になります。 たとえば、アカイカの場合、水中灯の色が青や青緑の場合の方が緑や白色よりも収穫量が多くなる、という実験結果があるそうです。LED照明を使った集魚灯は、まだ始まったばかりですが、漁獲対象と波長帯の研究などがさらに進めば、漁獲効率がさらに向上するのではないかと、漁業関係者は期待しています。

植物工場でも人気を呼ぶ

 LED照明を使った植物工場も人気を呼んでいます。レタスやシソ、ワサビ、イチゴなどの高級野菜や果実をLED照明で栽培する工場です。衛生管理が徹底しているのも特徴です。室内施設で、光の照射時間や温度や湿度をセンサーで管理します。天候に左右されないために安定的な供給が可能です。赤色は光合成を促進させる、青色は野菜の形づくりに役立つとか色の組み合わせを変えることで、消費者受けのする商品価値の高い野菜を栽培することが可能です。野菜類は化学肥料や農薬は一切使わず、安全、安心が売りです。大成建設やキューピーといった大手企業がすでに参入していますが、中小ベンチャー企業の進出も目立ち、LED照明を使った野菜工場は、成長産業に発展する可能性が濃厚です。

業務用の冷蔵庫や冷凍庫の照明にも引っ張りだこ

 このほか、意外な使い道として、業務用の冷蔵庫や冷凍庫内の照明があります。冷蔵庫や冷凍庫内で、蛍光灯を使うと、低温で照度が低下したり点灯不能に陥ったりします。また白熱灯を使うと、白熱灯が熱源になって、冷却効果を低下させるなどの問題が起こります。だが、LED照明なら、どんなに低温でも、照明が消えてしまう心配はありません。また白熱電球と違って,LED照明は光源がほとんど発熱しないので、冷却効果を損なう心配もほとんどありません。

価格が低下すれば利用範囲はさらに拡大

 LED照明は、東日本大震災による原発事故を契機に、節電効果の大きい照明として注目され、急速に普及しています。今後、漁火や植物工場などで実験が行われているように、波長帯と生物との関係などについての研究がさらに進み、価格が一段と低下してくれば、その利用範囲はさらに大きく広がってくるように思います。

2011年8月9日記

 
 
    TOP


 
 
©2000-2011 zeroemission Inc, tadahiro mitsuhashi