プロフィール
出版・刊行物
B-LIFE21
- 環境コラム
環境樹について
 
 

東日本大地震と津波、原発事故から何を学ぶか

日本を震撼させた東日本大地震

3月11日午後2時46分、三陸沖を震源とする東日本大地震は、マグニチュード(M)9で、記録が残る1923年以降国内最大の規模。高さ最大で30m近くの巨大津波が岩手、宮城、福島県などの海岸線に押し寄せ、海辺近くの多くの市町村を一瞬の間に飲み込み、壊滅させてしまいました。死者・行方不明者は合わせて約3万人、建物被害1万6000戸を超える大惨事になりました。亡くなられた方には謹んで哀悼の意を表するとともに被災地の皆さんに心からお見舞い申し上げます。

深刻な原発事故が発生し、被災地域の混乱を招く

今回の地震で津波に襲われた東京電力福島第一原子力発電所は、電気系統が壊され、冷却機能が失われたため、放射性物質が周辺地域に飛散、流出するなど深刻な原発事故を発生させてしまいました。原発事故対策では、「止める、冷やす、閉じ込める」の3大原則が必要だそうですが、電気系統が海水に浸され、壊されてしまったため、肝心の「冷やす」、「閉じ込める」の機能が働かず、原子炉周辺から排出される放射性物質が野菜や飲み水、海水などを汚染するなど、放射能被害が拡大し、日本を逃げ出す外国人や本社機能を東京から関西に移転させる外国企業も多く、騒然とした状態が続いています。

計画停電で、日常生活に大きな支障が・・・

原発事故によって、電気の供給が需要に応ずることができなくなり、東京電力は地震発生後の14日から計画停電に踏み切りました。原発事故に伴い原発の発電能力が1000万kw近く減少したため、事故直後の供給力は3350万kwまで低下し、一定時間停電せざるを得ない状態に追い込まれました。突然の停電は、日常生活に大混乱をもたらしました。JR鉄道、私鉄、地下鉄などの運休、間引き運転、道路交差点の信号灯が消え、交通渋滞、事故の多発、病院でも患者の手当、手術現場などで多くの不都合が起こりました。一般家庭では暖房が使えず、オール電化の家庭では、お湯を沸かすことも出来なくなりました。計画停電は、企業活動にも様々な影響を与えています。工場などの生産現場では、何時実施されるか分からない細切れ型の停電だと安定した生産活動ができなくなってしまいます。特に自動車や家電の精密部品を作っている工場の生産が止まってしまうと、完成品が出来なくなってしまいます。

産業界、夏場の需要期には25%減の節電で対応

東電では、緊急対策として運転停止中の火力発電の一部を稼働させるなどに踏み切りました。その結果、4月1日現在、東電の供給力は3850万kwまで回復しています。しかしこの程度だと需要が最大となる夏場の電力不足は賄えません。最大1500万kwh近くの電力不足になると東電側では予想しています。このため、経団連を中心とする産業界では、夏場に予想される電力不足を節電で乗り切るため、電力消費量を前年夏比25%削減する計画を経済産業省と相談しながら検討しています。

日本人の優れた転換能力で大きな節電効果

突然の計画停電は、人々に大きなショックを与えましたが、同時に分かったことは、企業や個人を含む日本人の優れた転換能力が予想以上の節電効果をもたらしたことです。たとえば、JR東日本では、列車数を減らす、車内の照明を暗くし、暖房温度を少し低く抑える、さらに駅のエスカレーターを止めるなどの節電に取組んだ結果、電力消費量を通常よりも3割近く節約できたそうです。また、都心の百貨店も、店内の照明、暖房抑制などによって、鉄道と同様に3割近く節約できたそうです。一般の商店街でもネオンや店頭の照明を消すなどで、大きな節電効果をあげています。一般家庭でも室内暖房を抑制する、室内の無駄な電灯は消す、深夜テレビは見ないなどの小さな節約に取り組みかなりの効果をあげています。このため、電力消費が予想よりも減少し、供給力以下になる日が多くなり、停電が見送られる日もでてきました。

戦後日本の発展モデルの転換が求められている

今度の東日本大震災の影響と波紋をあらためて考えてみると、戦後日本の発展を支えてきた経済モデルが大きな壁に突き当たり、日本再生、復興のためには、これまでの発展モデルを根本的に転換させなくてはならない段階に差し掛かっている、という気がします。戦後日本の経済発展を支えたエネルギーは石油、石炭などの化石燃料と原子力です。このうち、化石燃料はCO2を大量に排出し温暖化の原因になります。一方、今度の深刻な原発事故で、原発に対する安全神話は完全に壊れてしまいました。ひとたび事故が起こると、その影響は大きく深刻で、しかも長期にわたります。

脱化石燃料、脱原発の新モデルの構築を急ごう

このような反省に立てば、東日本大震災後の日本の再生、復興のためには、「脱化石燃料」、「脱原発」という二つのエネルギー転換を成功させることが大前提になります。もちろん、脱化石燃料、脱原発といっても、現在使われている化石燃料や原発依存をすぐさまゼロにせよ、ということではありません。化石燃料や原発の利用を直ちにゼロにしたのでは、日本経済は破綻してしまいます。

グリーン・リカバリーを目指せ

中長期目標として、石油や原発依存を低下させ、太陽光や風力、バイオマス、小水力、ヒートポンプなどの分散型の新エネルギー、さらに電気自動車やコジェネレーション〈水素の原料はバイオエネルギーなど〉の普及を高めていく政策を強力に推進していくことが必要です。微調整ではなく、大転換が必要です。計画停電で示した日本人の高い転換能力と国難に狼狽せず冷静に対応できる忍耐力は、新しい国家目標が設定されれば、予想以上の能力を発揮できることを示しています。大震災を福に転じさせるためにも、日本は今こそ、脱化石燃料、脱原発を可能にさせるグリーン・リカバリー(緑の回復)の分野にヒト、モノ、カネ、情報を総動員して、日本の再建に総力をあげて取り組むべきでしょう。

2011年4月1日記

 
 
    TOP


 
 
©2000-2011 zeroemission Inc, tadahiro mitsuhashi