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温暖化を促進させるCO2は嫌いですか?

暴れまわる異常気象に打つ手なし

この数年、異常気象が止まりません。昨年夏の日本は記録的な猛暑に襲われましたが、この冬は一転、山陰、北陸、北海道などが豪雪に見舞われました。屋根に上って雪下ろしをしていて、足を滑らし、命を失った人も高齢者を中心に100人近くにも達しているようです。

北半球は寒波、南半球は大雨の被害

異常気象は日本だけに限りません。昨年12月から1月にかけて、欧州やアジア、米国東海岸でも記録的な寒波に悩まされました。同じ時期、南半球のオーストラリアやブラジルなどでは大雨による大きな被害がでました。

短期的には無視できない温暖化の影響

世界を駆け巡る異常気象の原因としては、太陽黒点説や北極振動説など様々な理由が指摘されていますが、過去100年ほどの比較的短期でみると、地球温暖化の影響を無視できません。特に20世紀後半の半世紀は、「膨張の時代」といわれるほど経済活動が活発化しました。それに伴って石炭や石油が大量に使われたため、大気中のCO2濃度が急速に高まり、地球温暖化を加速させてきたことも事実です。温暖化は大気や海流の流れに影響を与え、それが気候変動を引き起こし、異常気象を誘発するわけです。

CO2悪者説に反論、ノーベル化学賞の根岸英一教授

このため、温暖化の原因物質であるCO2が、目の敵にされ、悪者扱いにされています。
このCO2悪者説に異議を唱えているのが、昨年ノーベル化学賞を受賞した根岸英一・米パデュー大学特別教授です。CO2は、食料の原料です。だからCO2がなければ、食料を作ることができず、人間は生きていくことができません。自然界の営みを見れば分かる通り、植物は大気中のCO2と根から吸い上げた水を太陽光の力を借りて有機物(食料)と酸素に変えます(光合成)。CO2がなければ光合成が行われず、食料生産が止まってしまいます。根岸教授が「CO2さまさま」と言っているのは食の元がCO2であるからです。

CO2のエリマキ効果も大きな貢献

CO2が人間生活にとってもう一つかけがえのないほど大きな役割をしているのが、地表の適温の維持です。現在、地球表面の平均温度は、約15℃です。この適温が保たれているために、私たちは快適な生活を送くることができます。もし地球を取り巻く大気の中に、温室効果ガスであるCO2の薄い膜がなければ、地表の平均温度はマイナス18℃まで低下し、人間の住める星ではなくなってしまいます。CO2の襟巻効果も無視できません。このように考えれば、CO2は、私たち人間にとってなくてはならない大切な物質であることが分かります。それにもかかわらず、CO2が悪者扱いされているのは、大気に占めるCO2濃度が増え続けているためです。

悪いのはCO2ではなく、化石燃料依存型のライフスタイルです

なぜ増え続けているのかといえば、私たち人間が豊かさを求めて、化石燃料依存型の生活を続けているためです。悪いのは、CO2ではなく、化石燃料に依存し過ぎた私たちのライフスタイルに問題があるわけです。だから悪いのは人間ということになります。
私たちの経済活動などによって1年間に排出されるCO2の排出量は、世界全体で約72億トン(炭素換算、以下同)です。これに対し、森林が約9億トン、海が同22億トン、合わせて31億トンを吸収しています。これが自然の吸収量の限界です。 行き場がなくなった残りの41億トンが大気中に蓄積され、CO2濃度を高め、温暖化を加速させる原因になります。

世界のCO2排出量を年間、31億トン以下に抑制しないと大変なことになる

CO2の排出量を年間31億トン以下に抑制することができれば、温暖化問題は発生しません。ところがこれが簡単にはいきません。余分の41億トンのCO2削減だけでも大変なのに、これからの世界を見ると、中国やインドなどの新興国の経済発展が物凄く、現状を変えない限り、余分のCO2排出量は近く50億トンを超え、今世紀末には100億トンへ迫ることも予想されます。そうなれば、もはや温暖化による気候変動は、制御不可能な状態になってしまうでしょう。

脱化石燃料型社会へ転換急げ

私たちは、一刻も早く化石燃料依存型の経済活動やライライフスタイルを転換させていかなくてはなりません。新エネルギーや省エネルギーのイノベーション(技術革新)が求められ、その普及が急務になっているのもそのためです。

根岸教授、「人工光合成」の研究を提唱

根岸教授は「人工光合成」の研究を提唱しています。人工光合成に成功すれば、大気中のCO2を利用して、食料や燃料を作りだすことが可能になります。将来予想される食料難も解決できるし、大気中のCO2削減を通して温暖化対策にも貢献できます。もし、成功すれば、「ノーベル賞の二つや三つ得られる」(根岸教授)という大仕事ですが、取組む価値は十分あります。根岸教授は研究仲間と一緒に文部科学省へ研究支援を求めています。こんな夢のある研究プロジェクトならぜひ実現させたいものですね。

2011年 2月6日記

 
 
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