コペン合意に基づき、主要国、削減目標値を提出
日本政府はコペンハーゲン合意に基づいて、先月末、国連・気候変動枠組み条約事務局に対し、アメリカや中国など主要排出国の参加を条件に、20年までに温室効果ガス(GHG)の排出を90年比25%削減するという数値目標を提出しました。アメリカ、EU、中国、インドなどの主要排出国も相次ぎ数値目標を提出しました。この結果、年末に開かれるCOP16で、ポスト京都議定書の排出削減の国際的枠組が合意される可能性がかなり強まってきたように思います。
90年比25%削減達成のための法案
政府は、目標値の提出を機に25%削減を担保するための法律として、現在「地球温暖化対策基本法案(仮称)」の作成を急いでいます。一方、鳩山政権は、昨年末の臨時閣議で新成長戦略を決定し、20年までに年率名目成長率3%、同実質成長率2%以上を目指すことを発表しました。この中で、特に環境分野では、20年までに新規市場50兆円以上、新規雇用140万人以上を創出する青写真を明らかにしています。このことからも明らかなように、温暖化対策基本法案は、単に25%削減を目指すだけではなく、景気回復のためにも重要な役割を担った法案でもあることが分かります。今国会での成立を目指しています。
再生可能エネルギー比率20%程度を目標
法案には中期目標のほかに、長期目標として50年には80%削減を目指すことが明記され、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーの割合を最終エネルギー消費の20%程度(現在は2%程度)まで引き上げる目標も掲げられる見通しです。また、目標達成のための施策として、@キャップ&トレード方式による国内排出量取引制度の創設、A地球温暖化対策税の導入、B新エネルギー発電の全量買い取りと固定価格買い取り制度の創設などが盛り込まれることになっており、成立すれば画期的な法律になります。
産業界の一部では強く反発する動きも
これに対し、鉄鋼や電力業界など化石燃料依存型産業を中心に強い反発が起こっています。20年までに25%削減する対策が実施されれば、企業はそのための対策コストに追われ、経営が悪化する、輸出競争力を失う、さらに経済成長率を低下させ、家計の可処分所得を減少させるなど家計の心配までして反対の理由を列挙しています。だが、この反対理由は誤った前提に立った議論のように思えます。最大の誤りは、温暖化対策が経済や産業活動にとってマイナス要因としてのみ働くとして位置づけ、プラス要因を無視し何も対策をとらない現状維持の状態が最も望ましいという前提に立っていることです。
現状維持政策は産業の活力を殺してしまう
果たしてそうでしょうか。バブルが弾けた後の日本の経済成長率を10年ごとにみると、90年代が実質年率1・4%、2000年に入ってからは同0・7%で低迷しており、過去約20年間年率で1%程度の成長しかしていません。この間、道路などの公共投資を増やすなど従来型の景気対策で対応し、エネルギー多消費型の産業構造や化石燃料依存型のエネルギー構成比の大胆な転換などは一切避け、現状維持政策を続けてきました。その結果、巨額の財政赤字をうみだし、米、EUなど主要先進国の中で最低の成長にとどまってしまったわけです。時代の転換期に現状維持を続ければ衰退に陥ることを歴史は示しています。現状維持にこだわり続ければ、20年までの経済成長率はよくてもゼロ成長、最悪の場合はマイナス成長に陥る可能性さえ予想されます。
変革こそ新たなビジネスチャンスを創り出す
局面を打開するためには、現状維持路線を放棄し、エネルギー多消費型の産業構造、化石燃料依存型のエネルギー構成比を思い切って転換させ、低炭素社会という新しい世界へ向け全速力で走り出すことです。それによってブレークスルー(現状打破)を伴うイノベーションが(技術革新)が起こり、新規投資、新規需要が生まれ、低迷する経済を活性化させることが可能になります。そのための大切なきっかけになるのが地球温暖化対策基本法案です。同法案の早期成立を期待する理由もそこにあります。
2010年2月14日記