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際立った中国の存在感〜COP15、コペン合意文書承認〜

新枠組みづくり先送りで、COP15閉幕

コペンハーゲンで開かれていた第15回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP15)は、19日、2013年以降の地球温暖化対策の国際的枠組みづくりに失敗し、問題解決を来年以降に持ち越して閉幕しました。約190カ国、日米欧、中国など各国首脳だけでも約130名が参加し、世界的に注目された国際会議だったため分裂は許されませんでした。このため主要国は18日の会議閉幕時間を越えて徹夜で議論を続け、なんとか13年以降の温暖化対策の方向性を示す「コペンハーゲン合意」を採択ではなく、それより拘束力の弱い承認で決着しました。英語の“take note”を承認と訳したものですが、日本政府関係者によると、その場で署名せず、記憶に止め後で署名することもありうるという意味だそうです。特派員時代、この言葉は「留意する」と訳していたことを思い出しました。

来年1月31日までに20年の削減目標を提示する

コペン合意の主な内容は@世界の気温上昇を科学的見地から2度以内(産業革命前比)に抑制する、A先進国は20年の削減目標を1月31日までに提示する、B途上国も同日までに削減計画を提示する、C途上国支援のために先進国は、12年までに100億ドル、20年までに1000億ドルを用意するーーなどです。合意内容は、法的拘束力があるものではなく、具体的な数値目標も明記されておらずその点で不完全なものですが、今後の方向性は正しく示しているように思います。温暖化による気候変動は現状のままで推移すると、15年頃には制御不能な状態に陥る危険性が大きいと多くの科学者が指摘しており、合意にはそうした危機感が盛り込まれています。

強まる先進国と途上国との対立

地球温暖化対策のために残された時間はあまりありませんが、それにもかかわらず、COP15で、当初、日本やEU(欧州連合)が求めていたアメリカや中国、インドなどを加えた新たな削減のための枠組みづくりに失敗したのは、先進国と途上国の対立が予想以上に深刻だったことが指摘できます。

CO2排出量世界一の中国、先進国批判を強める

特に、07年にアメリカを抜いて世界最大のCO2排出国になった中国の存在が際立ちました。経済成長重視の中国が、これまで通りの経済発展を目指せば、CO2排出量は加速化し、2位のアメリカとの差が一段と大きくなることが予想されます。そうなれば、当然中国への風当たりが強まってきます。このような事態を回避するため、中国は、「現在の温暖化は先進国がもたらしたものである」として、米EUに対しては削減目標をさらに引き上げること、日本に対しては、「90年比25%削減」は非現実的だと文句をつけるなど、舞台裏では言いたい放題で先進国批判を続けたそうです。一方、途上国のうちアフリカ諸国や海面水位の上昇におびえる島嶼国にたいしては、個別支援をちらつかせ味方につけるなど、得意の裏外交を積極的に展開し、途上国の代表としての存在感、発言力をこれまで以上に強化させることに成功したようです。「攻撃は最大の防御である」を地で行くような中国の振る舞いが目立ったと会議関係者は指摘しています。


国益論争が目立ち、地球益がかすんでしまった


このように、COP15では、先進国と途上国との間の利害対立に多くの時間が使われ、何のためのCOP15だったのか、が置き去りにされてしまったように見えます。温暖化対策は地球益を守るための国際会議のはずですが、COP15では、それぞれの国の国益が強く前に打ち出され、肝心の温暖化対策を話し合う時間が足りず、地球益がかすんでしまったようです。日本の25%削減や途上国支援のための「鳩山イニシアチブ」も、中国やアメリカの陰に埋没して会議の流れを主導するまでには至らなかったようです。


日本は、25%削減の旗を掲げ、目標達成の工程表作成を急げ


しかしだからといって、日本は卑屈になるべきではありません。「90年比25%削減」の旗を高く掲げ、それを達成するための工程表を早急に作成し、実行に移すべきです。25%削減のための道すじを明らかにすることは、改めて来年から始まるポスト京都議定書の新たな枠組みづくりで日本がリーダーシップを発揮するための必須条件です。同時にその実行は、景気回復、雇用拡大を可能し、現在の深刻な不況から抜け出し、低炭素社会を実現するために必要な政策でもあります。そのチャンスは今をおいてほかにありません。25%削減を掲げる鳩山政権の奮起に期待したいと思います。

2009年12月20日記

 
 
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