地球温暖化対策の一環として浮上
地球温暖化対策の一環として、コンビニエンスストアの深夜営業を規制しようという動きが各地で広がっています。すでに検討しているのは、埼玉県、東京都、神奈川県、長野県、愛知県、京都市などがあり、これから検討を予定しているところとしては、群馬県、京都府、横浜市、浜松市などがあります。京都議定書の目標達成計画の達成状況を検討している中央環境審議会(環境省)と産業構造審議会(経産省)の合同会合でも、昨年、コンビニエンス業界の代表者を招き、規制の効果を含め、業界の意見を聞いています。
京都市が口火を切る
今回、口火を切ったのは京都市です。5月に政府が募集した「環境モデル都市」に応募した際、コンビの深夜営業見直しを明記しました。同市では、自粛の目的として、消灯によって夜間の町並み景観をよくすることを掲げていますが、同時に温室効果ガスの排出量抑制をも視野にいれています。いまのところ、規制時間は午後11時から午前7時までを考えています。業界の自主規制を期待していますが、それが無理なら条例制定による規制も選択肢の一つとして考えているようです。
長野県・軽井沢町では、「静穏保持」目的で76年から実施
早ければ来年度から市内中心部にあるコンビニに自粛を求める方針です。深夜営業規制では、長野県・軽井沢町が1976年から「静穏保持」を目的に、午後11時から午前6時までコンビニを含む商店の営業を条例で原則禁止していますが、都心部の規制はこれまで例がないだけに京都市の実験に関心が寄せられています。
コンビに業界は大反対
コンビニの深夜営業規制に対しては、同業界が大反対をしています。日本フランチャイズチェーン協会加盟のコンビニ12社の店舗数は、全国で約4万2千店ありますが、その約95%の約4万店が二四時間営業をしています。コンビニ側の反論理由としては、@コンビニ業界のCO2排出量は、国内総排出量の0・2%に過ぎない、A深夜帯に働く人たちの利便性を奪うことになる、B女性や子供が駆け込んで助けを求めたりする防犯拠点の役割を果たしているーなどがあげられています。
深夜型ライフスタイルの定着でコンビニの深夜営業広がる
24時間営業のコンビニが急速に広がった背景には、いつでも手軽に買い物ができる利便性があります。深夜型ライフスタイルが定着する中で、コンビニは、若者の間で圧倒的な人気があります。コンビニのない生活など考えられないと言い切る若者も少なくありません。若者層を問わず人気のあるおにぎり、現金の受払いが簡単にできるCD(現金自動受払い機)、コピー機などが一箇所で利用でき100円、200円の小額で一品ごとの買物ができるコンビニは、高齢者にとっても人気があります。究極の利便性を手放したくないとする人々にとっては、今の24時間営業体制は天国で、深夜規制などは、絶対して欲しくないというのが本音でしょう。
深夜に店内をこうこうと明るく照らすのは、電気の無駄遣いという批判も
一方、深夜規制が必要だとする人々の考え方はどうでしょうか。大きく二つ指摘できます。第一は、やはり温暖化対策として必要だという考え方です。コンビニといえば、深夜店内をこうこうと明るく照らし、いかにも電気を無駄遣いしているような印象を与えています。コンビニ業界のCO2排出量が、日本全体の0・2%に過ぎないといっても、排出している事実には変わりがありません。深夜規制によって少しでも削減できれば、それなりの貢献が期待できるという指摘です。
省エネ型ライフスタル転換のきっかけになる
第二は深夜型のライフスタイルを転換させるきっかけになるという考え方です。深夜型のライフスタイルは、直接、間接に石油などの化石燃料に大きく依存したライフスタイルです。人間が本来寝る時間である深夜に起きていることは健康にも良くないし、青少年の非行化をあおり、エネルギーがムダに使われているとする批判です。
理想をいえば、日の出とともに起き、日没とともに一日の仕事を終えるのが健康的
理屈をいえば、筆者が3月に訪ねた南太平洋のサンゴ礁の国、ツバルのように日の出とともに起き、日没とともに一日を終える生活が、人間にとって最も健康的な生活スタイルでしょう。それが豊かな社会の中で、深夜型のライフスタイルが定着し、24時間営業のコンビニの登場になったわけです。
利便性を少々犠牲にする覚悟も必要
もちろん、深夜型のライフスタイルを転換させるためには、コンビニの深夜営業規制だけでは、十分ではありません。ネオンをはじめ、深夜営業のレストランやゲームセンター、さらにテレビなども含めて自粛することが必要です。日本が低炭素社会を目指していくためには、利便性を少々犠牲にするぐらいの覚悟は必要です。多くの自治体がコンビニの深夜営業の自粛を目指して動き出した背景には、京都市の取り組みのように温暖化対策だけではなく景観重視、ライフスタイルの転換など様々な目的があると思います。もっとも、田舎のコンビニの場合は、日常使うお金や年金の受払いなどの公共的役割を果たしているところもあります。このような場合、一律規制には問題があります。
ライフスタイル転換の大きな第一歩にしよう
いずれにしても、規制に当たってはメリット、デメリットを総合的に考慮し、弾力的な対応が求められますが、省エネ型のライフスタイルを長期的に定着させていくことはこれからの日本に大切なことです。コンビニの深夜営業自粛は、そのための大きな一歩になるように思いますが、いかがでしょうか。