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グリーン・ニューディールに期待―オバマ米大統領の温暖化対策

オバマ新時代の幕開け

昨年11月初めの米大統領選挙で大勝した民主党のバラク・オバマ氏は来年1月20日、第44代米大統領に正式に就任します。オバマ新時代の幕開けです。オバマ勝利の直接の理由としては、過去8年間、ブッシュ前大統領の下で進められた一連の政策、たとえばイラクへの武力侵攻、京都議定書からの離脱などが米国民から「ノー」を突きつけられたことがあげられます。さらに加えて、9月中旬のリーマン・ショック(米大手証券会社、リーマンブラザーズの倒産)が引き金になった金融危機による深刻な不況の発生も前政権が推進した野放図な金融緩和政策が原因だとして米国民から批判されました。

米民主党は,環境問題に積極的な政党だ

「変化」を大きく掲げて当選したオバマ新大統領に対する期待の一つは温暖化対策への積極的な取り組みです。元々アメリカの民主党は温暖化対策に積極的な政党です。97年に京都議定書が採択された時の米大統領は民主党出身のクリントン氏でした。京都で開かれていた温室効果ガスの削減交渉が暗礁に乗り上げると、環境派のゴア副大統領が直接京都に乗り込み、日、米、EU(欧州連合)が、90年比で温室効果ガスの排出量をそれぞれ6、7、8%削減するという合意づくりに強力なリーダーシップを発揮しました。

共和党出身のブッシュ大統領は、京都議定書を離脱

しかし01年初めに共和党のブッシュ大統領が就任すると、アメリカは「環境よりも経済が大切だ」として、京都議定書から離脱してしまいました。このため、京都議定書はアメリカ抜きで05年2月に日,EUが中心になって発効させました。しかし議定書批准国は世界のCO2(二酸化炭素)排出量の3割をカバーするに過ぎません。効果をあげるためには、世界最大の排出国のアメリカの参加が欠かせません。

オバマ氏、50年に90年比80%削減を約束

この点、オバマ大統領は、積極的で、今年末までに合意を目指すポスト京都議定書(13年以降の排出削減)の枠組みづくりに意欲的な姿勢を見せています。すでに50年をめどとする長期目標については、日本の「現状よりも60〜80%削減」よりも野心的な「90年比80%削減」を表明しています。そのために06年時点で90年比14・4%も増えてしまったCO2の排出量を20年までに90年レベルまで削減することを約束しています。


グリーン・ニューディール政策で雇用創出、景気拡大目指す


オバマ大統領は、目標達成のための総合的な環境政策として、「グリーン・ニューディール」政策を目指しています。ニューディールとは、「新規まき直し政策」という意味です。1930年代の大恐慌を乗り切るため、当時のフランクリン・ルーズベルト大統領が打ち出した大胆な雇用創出・景気拡大政策のことです。それにあやかり、グリーンを頭に付けたものが、グリーン・ニューディール政策です。深刻な不況を克服するためには、新しい需要を創出する必要があります。それがグリーン需要です。これまでの化石燃料依存型の社会を低炭素社会に思い切って転換させていくためにクリーンエネルギーや省エネルギー技術の積極的な開発を推進し、環境配慮型の新産業を育て雇用を拡大させ、景気拡大策を目指すという戦略です。

クリーンエネルギー分野に1500億ドル投入

同大統領は、選挙公約の中で、その柱となる政策を打ち出しています。第1の柱は、再生可能エネルギーの積極的な開発です。具体的には、今後10年間に風力や太陽光などのクリーンエネルギー分野に1500億ドル(約15兆円)を投入し、商業用再生可能エネルギーの開発やエネルギーの効率向上分野で、新たに500万人の雇用(グリーン・ジョブ=緑の仕事)を創出する政策を掲げています。

政府部門、消費電力の二五%を再生可能エネルギーで賄う

そのためには、@クリーンテクノロジーに関する研究開発費をこれまでの2倍に増やす、Aクリーンテクノロジーに関する職業訓練を実施する、B20年までに連邦政府の消費電力の25%を再生可能エネルギーで供給する、などが検討されています。  また、バイオ燃料については、30年までに600億ガロン(約2300億リットル)の供給を目指して税制優遇措置を実施する計画です。バイオ燃料の普及・促進を図るため、燃料供給業者に対しては、10年を基準年として5年以内に燃料に占める炭素の割合を5%削減、10年以内に10%削減を義務付ける計画です。

14年までに白熱灯を廃止する法律制定へ

第2の柱である省エネ政策としては、20年までにエネルギー需要を予測値よりも15%削減することを目指しています。その実現のために、@連邦政府の新築施設のエネルギー効率を5年以内に40%向上させ、既存施設の場合は5年以内に25%向上させる投資をする、A10年以内に民間の新築住宅のエネルギー効率を50%、既存住宅は25%それぞれ向上させる、B14年までに白熱灯を廃止する法律を制定するなどです。

15年までにプラグインハイブリッド車100万台導入

第3の柱がエコカーの推進です。そのために、@1ガロン当たり150マイル走行可能な国産プラグインハイブリッドカーを15年までに100万台導入する、Aエコカーの購入に対して7千ドルを税額控除する、B国内の自動車メーカーとその部品メーカーに年間40億ドルの減税と借入保証をする、などとなっています。アメリカのビッグスリー(3大自動車メーカー)は、環境対応を怠ったことなどが影響し、今度の大不況の中で、瀕死の状態に追い込まれています。オバマ大統領のエコカー推進策は、ビッグスリー救済策をも視野に入れています。 ブッシュ時代に遅れを取ったアメリカの温暖化対策がオバマ大統領の下で、積極的に展開されることを期待しています。

2008年11月24日記

 
 
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