2002年度寄付講座
早稲田大学オープン教育センター

第6回:谷口正次氏(2002.5.29)

「資源採掘から環境問題を考える」

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北山 今日お話をいただくのは太平洋セメント株式会社専務取締役の谷口正次さんです。谷口さんは1960年に小野田セメント(現在の太平洋セメントの前身)に入社されて、小野田セメントで資源事業本部長を長く経験され、現在は太平洋セメントの他に屋久島電工株式会社の代表取締役社長も兼ねていらっしゃいます。今日のお話は資源問題と環境問題との関わりのお話です。

 谷口さんは現在、国連大学のゼロエミッションフォーラム理事をされており、すでに配布されているブックレット『資源採掘から環境問題を考える―資源生産性の高い経済社会に向けて―』の中で、これまでご研究、ご経験等を取りまとめていらっしゃるので、この話は「資源採掘から環境問題を考える」というテーマでお話いただくことになります。

 では谷口さん、よろしくお願い致します。

地球環境問題は資源問題

谷口 ただ今ご紹介いただきました谷口です。ご紹介の中にもありましたように、私のバックグラウンドはマイニング・エンジニア(鉱山技術者)です。これは現在、絶滅危惧種の職業です。早稲田大学には資源工学部があると思いますが、東京大学やいろいろなところにもあります。昔は鉱山学部、鉱山冶金などいろいろあったのですが、就職すべき鉱山がないという理由で、日本ではもう専門教育を放棄してしまっているのです。したがって、初等教育もほとんどないと言っていい。これが日本の地球環境問題にたいへん大きく関連するということを今日は申し上げたいと思います。マイニング・エンジニアであった私にとってそれが責任であり義務だと思ってお話をしているわけで、環境関係の発言をされる方でこの私が今から申し上げるようなことを話す人は皆無に近いです。

 今からお話をする前段としてまず10分間ビデオをご覧になっていただきたいと思います。これは昨年NHKとBBC、CNNが共同制作をした「地球白書」というビデオですが、その中の冒頭の部分にNHKのディレクターが私のところに来ていろいろアドバイスをしました。そういう関係でこのビデオをもらい、これをこのような場で紹介させていただいているわけです。それではまずビデオをご覧下さい。

<ビデオ上映>

 私自身、職業柄ご覧いただいたような世界中の大規模鉱山を実際に視察したり、商売もした経験があります。例えば、オーストラリア北部にはアボリジニの特別居住区があります。皮肉なことに、そういうところにウラニウム鉱石が見つかるのです。そうするとまたアボリジニを移動させなければならなくなり、それが政治的な問題になり、いつも延々と議論が続くのです。オーストラリアでは他にボーキサイト鉱山、石炭鉱山、鉄鉱石鉱山に行きました。カナダでは石炭鉱山、金鉱山。カリフォルニアは金鉱山。ブラジル、パプアニューギニアの銅鉱山。アフリカのダイアモンド鉱山、銅鉱山。これらの世界中にわたる大規模鉱山を見て回っての私の実感をお話しようというわけです。

 私はセメント会社にいましたので、セメント原料を掘るのに自然破壊をやってきた張本人ですので、私には世界の鉱山のことが非常によくわかるのです。ただ私が言いたいのは、ここで鉱山業を告発するつもりでお話をしているわけではないということです。告発しても仕方がない。工業化社会を支える鉱物資源はどうしても必要なので、誰かが掘らなければならない。ですから、いかにそのインパクトを少なくするか、できるだけ地下資源を掘らないで済むようにするかということが一番重要な問題です。要するに地球環境問題は資源問題だとも言えますし、根本的には文明の問題だと思います。工業化社会を支える資源問題ということで、私は今日はそのような話をしたいとおもっています。

 これからパワーポイントを使って、世界中の鉱山はこういうものだということをもう少し勉強していただければと思い、今からお話いたします。

<以下パワーポイント使用>

 これはフィリピンで発見された金鉱山で、発見された当時の手付かずの山です。発見されると、ボーリング機械で岩盤のコア鉱石を取って何%くらいの銅、金が含まれているかを調査します。

 ちなみにこの山は標高約800mあり、1,000m以上ボーリングします。そして、ボーリングされて採取されたコアを分析して、岩石1tあたり金の含有量が何gくらいかを調べます。ここでは1gの金が入っているというゾーンが真っ赤なゾーンで、0.3g入っているゾーンがうすい赤ということでore body(鉱体)と言っていますが、鉱体がこのように深さ800mくらいまで分布しているということがわかります。これを、まわりの金のない部分を全部除去して上から掘っていきます。まず森林を伐採して表土を剥ぎ、鉱石に到達するまで掘り下げていきます。

 発破で一気に岩を崩すこともします。

 そこで使用されているトラックは1台300t、小さくても150tくらいの大きさのトラックです。

 カリフォルニアの金鉱山ですが、非常に広大です。周りは針葉樹林ですが、これを伐採しながら開発していく。

 鉱石を採掘して、それを砕いて金の濃度を高めてから精錬所まで持っていくのですが、その選鉱カスや採掘カスは谷に垂れ流すのです。そうすると、雨がふるとザッと流れます。

 この写真は、パプアニューギニアのブーゲンヴィル島(Bougainville Island)というところにあった銅鉱山です。これは私自身がヘリコプター上から撮影したものですが、そのときにヘドロ状の選鉱カスが流れ出しています。つまり、金の濃度の高いところを取ったカスを捨てるのです。さらに大雨が降るとダムが決壊して、森の広大な部分をこのヘドロが埋めてしまう。そうすると中でワニや魚などが死滅するということです。ブーゲンヴィル島の銅鉱山は7〜8年前に暴動が起きて、先住民の暴動によって閉鎖され、未だに動いていません。ニューギニア政府の最大の収益源だったのですが、閉鎖されたままです。

 これはそうやって掘った鉱石を品位を高めて、1万〜3万tという大きな船で日本や先進諸国の精錬所まで運ぶための港です。






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