|
平成10年度11月5日 於:慶應大学湘南藤沢キャンパスθ館 講師:大林組 代表取締役副会長 津室隆夫氏 テーマ:「建設分野における環境問題への取り組み」
【議事録】
この講義でのプレゼンテーションデータなどはここをクリックしてください 竹中:今日は、大林組の副会長をしておられます、津室隆夫さんにおいでいただいています。建設業界のトップの方においでいただいて、この場で話していただくのは初めてだと思います。環境という観点から、建設業界というのは非常に大きな役割を果たすと思いますので、私自身も大変楽しみにしております。 津室副会長は、1929年大阪府の生まれです。京都大学工学部をご卒業になりまして、52年に大林組にご入社になりました。85年に常務取締役、87年に専務取締役、89年に社長になられまして、97年から副会長をしておられます。 スクリーンを使ってお話しをいただいて、その途中で10分くらいのビデオ上映が入るというふうにお伺いしております。それでは津室副会長よろしくお願いします。 津室:只今ご紹介いただきました、大林組副会長の津室でございます。わが国の次の世代を担う若い方々を前にお話しをさせていただく機会を得、大変光栄に思っております。竹中先生からご紹介がありましたように、地球環境問題というテーマを建設業の立場から取り上げてみたいと思います。これまでの講師の方々とは違った視点からご紹介できれば幸いに存じております。 本日はわが国の建設産業と大林組についてご紹介いたしましたのち、建設分野における環境問題への取り組みをご説明いたします。環境問題への取り組みを、地域環境問題と地球環境問題に分けてご説明し、環境関連技術の活用例の一つとして、有機系廃棄物を利用しメタンガス発電と有機肥料製造を行うエコロジカルリサイクルシステム、「大林BIMAシステム」をご紹介いたします。 まず、建設産業に対する皆さんのご理解を深めるため、予備知識を少し提供させていただきます。日本の建設市場は、ここ数年80兆円前後で推移してまいりましたが、昨年度は74兆円と、90年代では最低の水準にとどまりました。それでも74兆円という市場規模は、GDPの14%以上を占める、実に巨大な市場であります。これを先進諸国と比較しますと、日本は世界のトップであり、以下アメリカの59兆円、ドイツの22兆円となっております。国民一人当たりの投資額でみますと、日本はアメリカ及びドイツの2倍強となるわけです。 しかし、日本の生活関連の社会インフラについて申し上げますと、これは欧米に比べ依然として相当遅れているのです。 例えば下水道の普及率は、イギリス96%、ドイツ90%、アメリカ71%に対し、日本は54%にすぎません。また日本では明治以来、営々として2576のダムを建設してきましたが、その貯水量の合計は中国で建設中の三峡ダム一つの貯水量の半分にしかすぎないのです。都市生活用水について一人当たりの貯水量をみますと、ボストン717?、サンフランシスコ527?、ソウル392?、ニューヨーク285?に対し、東京圏はわずか30?であります。1994年、松山や福岡では1年の内300日に及ぶ給水制限があり、倉敷ではアラスカからタンカーで水を輸入するという非常事態になりました。水資源の確保という観点から、一概にダムは無駄とは言えない状況なのです。このように、日本人は実に危うい社会インフラに頼って生きているということを忘れるわけにはいきません。 それでは、建設市場の今後の見通しについてお話しいたします。日本経済が今後どのように回復していくのか、その成り行き次第ということになるわけですが、いずれにしても、短中期的には市場は横這い、ないしは微減の状態を覚悟しなければならないと思っております。しかしこれを長期的にみますと、建設市場は緩やかながらもかなり安定的に成長しうる市場であると考えております。その理由は一つには、日本の社会インフラは欧米各国からは、依然としてかなり遅れているということです。今後、社会インフラの整備は公共工事のみならず、PFI(Private Finance Initiative)の導入による新しい事業として、民間資金や、民間経営のもとで実施されることになるでしょうが、相当長期にわたって、欧米各国を後追いする状況が続くのは間違いありません。更に建設市場を下支えする要因として、戦後50年間の復興期、あるいは高度成長期に建設された膨大な建設物が21世紀以降次々と更新、あるいは大改修の時期に入ってくるということです。その他に、日本列島に住む者の永遠の課題である地震防災対策や人類全体の課題である環境対策も、今後の建設市場に大きく関わってきます。 次に、日本の建設産業に触れます。建設業の許可を得た業者数は、89年以降毎年増加し、現時点では実に56万社にのぼります。業者数の多さを反映して、大手ゼネコンの市場シェアは上位5社でわずか9%であり、他産業に比べますと非常に低い数値となっております。また、建設産業の就業者数は98年4月末で660万人と、日本の全就業者数の10%を占めています。実に日本人の十人に一人が建設産業で働いているということになります。建設産業の就業者数は、80年代中頃から増加の一途をたどり、97年8月には700万人に達しました。バブル崩壊後の不況が長引く中で、建設産業は他産業からの失業者の受皿としての役割を果たしてきたといえます。現在の失業率の高まりの一因は、建設業の受注減にあるともいえるわけです。 次に、大林組について若干ご紹介させていただきます。 資本金は577億円、従業員は1万1,721人、98年3月期の売上高は1兆4,651億円、市場におけるシェアは2%であります。売上高の内訳は、建築が69%、土木が28%、不動産が3%となっております。なお、売上に占める海外工事の比率は12%であります。 大林組は、91年に創業100年を迎えましたが、その時にCIを導入し、企業理念を成文化するとともに、その後10年間の基本的な方針を定めました。この基本方針を一言で申しますと、「量より質」ということであります。この質の中身は三つありまして、「ルネッサンス111」と呼んでおりますが、顧客にとってbPの会社、社会にとってbPの会社、社員にとってbPの会社を目指そうということであります。戦後50年、バブルの絶頂期に至るまで日本の産業界は量的拡大にひた走ってまいりました。これは当社におきましても同様でしたが、91年に今にして思えばタイミングよく創業100年を迎え、CI導入を機に、「いたずらに量を増やすことより質を高めよう」という路線を走ることとなりました。また創業100年記念事業の一つとして、国連大学主催の地球環境フォーラムを後援し、現在まで継続しておりますが、これも「量より質」の一環であります。このような努力を積み重ね、21世紀に向けて大林組の目指す姿を早く実現したいと思っております。 続きまして、私ども大林組の一員として建設事業に携わる者が、建設という行為をどのようなものと理解しているのかご説明いたします。 私どもは建設という行為の性質を、次の四つの切り口で理解しております。 一つめの切り口として、「建設とは空間に新たな価値を生む行為である」と考えております。空気以外何もない空間に、建設という行為を付与することによって、新たな利用価値を創造するという、非常にクリエイティブな行為であります。建設の種類によって空間の利用価値は千変万化ですし、建設工事の出来栄えや使われ方によっても、付加価値は千差万別になるという、非常に微妙な行為です。 二つめの切り口としまして、「建設とは人類と自然との調和を図る行為である」と考えています。建設という行為は、多かれ少なかれ地球や自然に手を加える行為であることを十分認識し、プロセスにもそして結果にも細心の配慮をしなければならないと考えております。 三つめの切り口としまして、「建設とは地域社会に溶け込む行為である」と考えています。建設という行為は、原則として建設物が立地する場所において行われる現地生産なのであります。その地元で資材、サービス、機械、機材、労働力などを調達する割合が大きく、いわば地場産業としての性格が強いといえます。 四つめの切り口としまして、「建設とは文化をつくる行為である」と考えています。建設物は他の産業の生産物と比較しますと、寿命が格段に長く何十年、物によっては100年以上にわたってそれを使う人、眺める人に文化的な影響を与え続けるものであります。建設物の中には国宝や重要文化財に指定され、永遠の文化的価値を持つものもあります。 この四つの切り口は、大林組におきまして企業理念として、社員が最初に頭にたたき込まれる概念なのであります。しかもこの概念は新たに定められたものではなく、長年にわたって私どもが感覚的に感じていたものを成文化したものなのであります。この四つの概念から、大林組の社員が何を判断基準の拠り所にしているのかご理解いただければ、非常に幸いであります。 続きまして、少しだけ大林組のPRをお許しいただき、当社の施工物件のうち皆様の目にとまりやすいものをいくつかご紹介いたします。 これは赤煉瓦で親しまれている東京駅です。 14年に竣工しました明治時代の代表的な洋風建築で、関東大震災の時にも殆ど被害はありませんでした。 これは大阪城です。 31年、当時としては珍しい鉄筋コンクリート造で再建されました。昨年3月には大改修も完了し、炭素繊維による、最近の耐震補強も施されました。手作りの銅板瓦も8割は再生利用しております。 これは赤坂のアメリカ大使館です。 アメリカ建国200年を記念して新築されましたが、70年に開催された大阪万博のアメリカ館での施工実績が評価され、当社にて施工いたしました。 これは狸穴(飯倉)のロシア(旧ソ連)大使館です。 ちょうど冷戦の真っ只中、アメリカ大使館と同時期に施工しまして、ちょっとした話題になったものであります。 これはバブル絶頂期の90年に発表しました、ミレニアムタワー構想です。 どちらかといえば、量と質を追いかけたものであります。イギリスの建築家サー・ノマンフォスターと大林組が設計しました。高さ800mの超々高層建物は、高度なインテリジェント・オフィス施設と、住宅、教育、カルチャー等の都市施設を併せ持つ海上立体都市構想でありました。 これは関西国際空港です。 新しい日本の24時間稼動空港として、94年9月に開港いたしました。 これは今年4月に開通いたしました、明石海峡大橋です。 橋の長さが約4,000mの日本最長の吊橋です。阪神淡路大震災の震源地は数q東でしたが、メインケーブルで抑えてあったため、1mくらいの移動しか生じませんでした。 これは昨年12月に竣工いたしました、全長15qの東京湾横断道路アクアラインであります。 次に海外ですが、日本とバングラディシュの友好の懸け橋となったメグナグムティ橋です。これにより、ダッカ−チッタゴン間の260qが1本の道路で結ばれました。95年竣工のODA工事でありました。 これはタイのバンコクにあるサイアムコマーシャルバンク本社ビルで、95年竣工しました。地上37階、地下4階の大きな建物で、豪華なアトリウムの壁面はタイ文化を漂わせる色彩豊かなものになっております。タイ経済再生の拠点となってほしいものであります。 これは西暦2000年に開催されますシドニーオリンピックのメインスタジアムです。来年3月に竣工予定ですが、建設並びに施設の運営はBOT方式であり、当社を含むグループの提案が採用されたものであります。 国内に戻りまして、これは昨年3月に竣工した大阪ドームであります。 野球などのスポーツの他、各種のイベントに対応できる世界初のマルチドームとされています。 これは京都駅ビルディングです。 京都遷都1200年を祝うため計画され、昨年7月に竣工しました。ホテル、劇場、ショッピングモールなどの複合施設として生まれ変わったわけであります。 これは東京国際フォーラム・ガラス棟です。 旧東京都庁の跡地に建設された市民ホールで、こうした施設としては世界最大規模であります。アメリカの建築家ラファエル・ヴィニョリ氏の設計で、延べ床面積は40,000uです。新幹線のレールのカーブにあわせ、2本の柱で支えた大空間をどう活かすかが今後の問題であります。 最後に、写真はファサードの一部ですが、地上7階の建物の香川県文化会館であります。66年に竣工しましたが、長く地域の環境に貢献し、風雪に耐え、美しく維持され、社会に対し建築の意義を語りかけてきた建物ということで、昨年9月に日本建築家協会(JIA)から、初めてのJIA25年賞を受賞いたしました。25年以上当初のコンセプトを充たし、その存在意義を認められているという新たな評価が生まれたことは、建設業界にとっても大変意義深いことだと思っております。 それでは本日のメインテーマであります、「建設分野における環境問題への取り組み」についてご説明いたします。 環境問題は、地域環境問題と地球環境問題とに大別できます。歴史的にみますと、建設産業にとって最初に起こってきた環境問題は、地域環境問題でありました。数十年来、公害とも呼ばれ、騒音、振動、地盤沈下、大気汚染などが典型7公害とされ、さまざまな対策法規が制定されました。60年代、わが国は工業化・都市化を進め、毎年の成長率2桁と言われる高度の経済成長を遂げました。建設分野における技術開発も、超高層建物や省力化などが主なテーマでしたが、その裏ではこのような公害関連の技術開発も進めておりました。私はこの時点から環境関連の技術開発に関わり、続けて30年以上に渉って関与していました。 まず工事に伴う騒音、振動、地盤沈下などの低減について申し上げます。大林組ではこの課題に対処するため、66年フランスの地下工事専門業者から、ソレタンシュ工法という地下深くまで鉄筋コンクリートの連続壁を構築する技術を導入いたしました。その手順は、地上から壁状に土砂を掘削して、ベントナイト溶液で土砂の崩壊を防ぎます。そして所定の掘削が終われば、鉄筋かごを挿入し、ベントナイト溶液とコンクリートを置き換え、コンクリートの壁をつくるわけであります。この技術導入にあたりまして当時、在来のシートパイル工法との競合の問題もありましたが、何よりも困ったのは通産省とのやりとりで、外貨不足の中あえて公害低減に取り組み、どのようなメリットがあるのか理解を得るのに苦労したことであります。 この技術はその後ソレタンシュ社、そして大林組の両社においてイノベーションを加え、オウスソレタンシュ工法としてパワーアップを続けました。イノベーションの内訳は工事公害を低減させながら、連続壁の精度と信頼性を高めることにより、地下の外壁、支持杭などにその用途を広げたことであります。さらに地下工事の作業空間を大きく開放したことも評価されていいと思います。7公害のうち、騒音と振動は建設工事に伴って多く発生するものであり、苦情件数も多いものですから、低騒音建設機械の活用などを積極的に行ってきました。また騒音や振動の発生抑制方法や、伝播遮断方法の技術開発にも力を注いできました。その一つが工事に先立って近隣の騒音振動分布を精度よく予測する手法の開発です。ハイテク工場などの工事計画時にも役立てられています。 以上のように、この工法は公害対応技術として、民間建築工事で実績を重ねました。しかし、公共土木工事では1社の先行技術は敬遠され、他社も類似の工法で追随するまで計画には組み込まれません。そのことにもどかしい思いもしておりましたが、最近では提案競技、いわゆるプロポーザル方式も採用されるようになり、少し前進したなと思っております。 このような経過を辿り、オウスソレタンシュ工法は土木工事の分野にも利用が拡大していきます。LNG地下タンクの工事や橋梁の基礎にも利用され、土留め、水を止める遮水、無沈下、騒音、振動の低減等々に役立てられています。先程ご覧いただいた明石海峡大橋メインケーブルのアンカーにも、この工法が使われました。さらに、その遮水性を活かし、地下ダムによる水資源開発に利用されました。連続壁により地下ダムを構築すると、地下水は塞き止められるのです。 7公害の一つ、大気汚染対策に移ります。 次に出てきましたのが、排気や悪臭をとりあえず拡散する方法を考えようということであります。この課題に対処するため、71年にハンガリーのスウェトー工法という鉄筋コンクリートの煙突などを建造する技術を導入しました。当時西側諸国では、ドイツとオーストリアにライセンサーが1社ずつあり、東側ではハンガリーに1社ということでありました。ちょうどこの年は、日本で環境庁が発足した年です。いわゆる公害問題が取り沙汰されるようになったわけです。同時にその翌年、ローマ会議で成長の限界ということが議論されました。そのような情勢を受けてわれわれもハンガリーの技術を導入したわけですが、これは型枠をジャッキで押し上げ滑らせて、上昇させながら連続的にコンクリートを打設していく方法で、日本ではスリップフォーム工法と呼ばれております。この工法によってつくられたのが中国電力下関火力発電所の200m煙突で、76年に完成いたしました。燃料は重油、石炭の混焼でした。そして東京電力の横浜火力発電所の200m煙突もこの工法です。2年ほど前にできましたが、煙突は美観上の配慮から単純な円形断面ではなく、クローバー状の断面となっております。燃料はLNGです。 この下関火力発電所建設から横浜火力発電所建設までの25年間、多くの煙突をつくりましたが、2度にわたるオイルショックにより燃料も重油から石炭、そしてLNGと多彩になりました。工業化の進展に伴う大気汚染で大きな公害を起こした、硫黄酸化物SOxは、今ではほとんど排煙のプロセスで取り除かれております。一方燃焼により発生する、窒素酸化物NOxは、一部プロセスの処理もありますが、燃焼効率を上げることでカバーされています。 今でもNOxの大気汚染には多くの法規制があり、煙突出口での濃度を下げるとともに、風下側の地表面での排出ガス濃度を許容値以下にする必要があります。煙突を高くすると地表面ガス濃度に非常に効果があります。広い範囲の環境を守るには、200mの高さの煙突が必要ということになります。ハンガリーの自然通風冷却塔は、黒煙を上げている石炭火力発電所の隣にあり、この冷却塔は直径100m、高さ120m、中は全くの空洞です。非常に精度よくこれをつくったのが、スウェトー工法であります。このハンガリーの技術提携先は、今でも東欧、中東などで煙突、冷却塔、テレビ塔、高架水槽など施工しておりますが、経済上の問題もあり、脱硫、脱硝はさほど進んでいないと聞いています。 四国電力西条発電所の石炭サイロの建設は、次のような理由からです。オイルショックの後、石油発電から石炭発電へと燃料の切り替えが行われました。石炭を野積みにしますと、自然発火や、粉塵発生の原因となります。そこで大型の密閉容器内に貯蔵する必要から、この工法によるサイロが採用されたわけであります。 ユーロサイロと呼ばれている石膏の貯蔵施設は、オランダで開発されました粉粒体貯蔵設備で、石膏のように固まってしまうものを、機械的に掻き取るという機器が付いております。これにより脱硫で発生した石膏を蓄え、建材工場への物流が安定したわけであります。今もつくられております。私どもの企業理念におきましても、建設は地域社会に溶け込む行為であると認識し、いわば現地生産であり地場産業であると先程申し上げました。このような考えから地域環境問題には、早い時期から積極的に技術開発をしてきたのであります。 さて次に地球環境問題に移ります。 地域環境問題が日本の高度成長期に発生したのに対し、約10年前の冷戦終結と時を同じくして、地球規模の環境問題がクローズアップされ始めました。さらに、現在の仕組みで発展途上国の経済発展が進み人口が増加すると、CO2の発生量は増えるばかりであります。昨年京都で行われました、地球温暖化防止対策会議(COP3)に続き、今年もアルゼンチンで国際会議(COP4)が開かれております。 地球環境問題には地球温暖化、酸性雨、オゾン層破壊、熱帯林減少、砂漠化などの九つの問題があるとされております。建設活動はいろいろな面で地球環境に関わりを持っており、私どもの企業理念におきましても、「建設とは人類と自然との調和を測る行為である」と認識し、多かれ少なかれ自然と地球に手を加える行為であり、プロセスにも結果にも細心の配慮をしなければならないと先程も申し上げました。このような認識を前提として、本日は特に関係の深い地球温暖化、熱帯林減少、砂漠化についての取り組みを紹介します。 地球温暖化の原因物質としては、CO2が過半の原因を占め、その他にメタン、亜酸化窒素などの物質が挙げられております。CO2は多くが人為的な発生物であるだけに、この排出量削減が最大の課題とされています。地球上の炭素循環は、人為的部分として化石燃料を燃焼させて発生する分と、樹木を伐採して森林減少に伴う分とがありますが、森や海洋の自然な炭素循環総量に比べるとわずかであります。しかしこのわずかな増加が収支バランスを崩し、地球温暖化を引き起こすと予測されているわけでありまして、将来にわたって人類が快適な生活を維持できるように、持続可能(sustainable)な社会を目指すには、化石燃料使用量の抑制と森林面積の増加が重要なことは明らかだと思います。 しかしこれは先進国、発展途上国双方にとってもなかなかの問題を含んでおります。日本におけるCO2の排出量を調査・分析し、建設活動分野のみを取り出しますと、その関連で排出されるCO2は、資材製造の分も含めますと日本の排出量全体の37%を占めます。私は建設に関わるCO2削減のキーワードは、「省エネ」と「建物の長寿命化」と考えております。 次に建物のライフサイクルで、CO2を検討してみましょう。住宅やビルの冷暖房や、照明、給排水に必要な電力、熱などのエネルギーを生産する際に排出されるものが3分の2ありますから、まず省エネが必要なわけであります。一方、建設資材の生産に費やすエネルギーも膨大でありますが、これは削減がなかなか難しい。また建設工事あるいは解体撤去工事で使われるエネルギーを節約するにしても、その効果は大きくは望めません。建物の寿命が2倍になれば、これらのエネルギーを2分の1にしたことと同じになります。したがって建物の長寿命化が重要なのであります。 大林組では、建設に関わるCO2の削減には、省エネルギーと建物の長寿命化が重要であると考え、既に70年代半ばから省エネルギー建築を検討してまいりました。82年、東京都清瀬市に技術研究所本館を完成させましたが、この建物は多くの省エネ技術を結集した超省エネビルで、通常ビルの4分の1のエネルギーで冷暖房や、照明を行っております。この超省エネビルは世界各国の注目を浴び、現在でも多くの見学者を迎えております。超省エネビルのエネルギー使用量の実績を、一般の建物と比較しますと、一般に事務所ビルでは年間床面積1u当り450メガカロリーの原油が必要とされておりますが、このビルでは87メガカロリーあれば十分であります。この建物の建設費は、一般ビルの20%程割高でしたが、光熱水費が4分の1ですので、初期の建設費増加分は8年あまりで回収でき、CO2排出量も73%削減されました。 近年、こうした省エネ手法を駆使した建物がいくつかは出現してきましたが、世界の中にはまだまだ普及しているとは言えない状況であります。また建物の寿命は、技術的に十分配慮すれば、現在の3倍程度のおよそ100年くらいまで延ばすのは、それほど困難ではありません。先程のJIA25年賞ではありませんが、永く機能を充たし、鑑賞に堪える建物にすることも、長寿命化のポイントになると思います。 環境問題については、単独の技術では大きな効果が望めません。種々の技術を選りすぐり、それらを組み合わせた複合技術が最大の効果を発揮するものでありまして、これを環境保全性と、経済性の両面から総合的に評価し、最も効果的な組合せを選定する必要があります。しかしこうした複合技術を評価するには、かなりの時間を要します。そこで大林組では、今年11月「省エネビル総合評価システム」というコンピュータソフトを開発しました。このソフトは建築の基本計画段階において、要素技術と省エネ手法の組合せを自由に選択し、熱負荷計算とエネルギーシミュレーションを行うことにより、環境保全性と経済性を短時間で総合評価できるというものであります。このように商品の寿命期間の環境負荷を予測する手法を、LCA(life cycle assessment)と呼びます。私は建設分野では省エネ、長寿命化の発想こそが難題の地球温暖化防止に貢献できるものと確信しておりますので、今後も積極的に提案していきたいと考えております。 それでは建物の省エネと長寿命化をまとめた映像がありますので、ご覧いただきます。 ( ビデオ上映 ) 続きまして本論に戻ります。 建築資材について申し上げます。鉄鋼やセメントは、メーカーの努力もありますが、やはりそれを製造する過程で大量のCO2を大気中に排出します。これに比べて木材は樹木の成長過程で大気中のCO2を吸収固定しており、製材・加工時点の必要エネルギーは小さいので、CO2を吸収した建設資材となるわけです。もっとも建物として使った後現場で焼却すれば元の木阿弥ですが、いろいろと再利用の用途が拡大しておりうまく使えば建物のCO2排出量を大幅に減らすことが可能になります。私どもの技術研究所内に新築しました木造実験棟の解析結果では、木造が可能な場合にはそれを再評価すべき時代にきているとも考えております。 次に熱帯林の減少について申し上げます。これは野生生物種の減少にも直結しており、世界の多くの人達が関心を示していますが、日本には熱帯林がないため、わりと無関心な人が多いようであります。建設業は今から8年程前、世界の環境市民団体から、「世界の熱帯林を破壊しているのは日本の建設業である」との強い抗議を受けたことがありました。しかし調査の結果、世界の熱帯林減少の内、日本の建設業がコンクリート型枠として使用しているのは、0.15%と極めてわずかとの結果を得ました。しかしながら、その材料はボルネオ島のように特定の地域から輸入しており、現地では焼畑農業のための過剰伐採によって森林が荒廃しているということも分かりましたから、92年より業界として型枠用の熱帯材使用削減に踏切りました。再生サイクルの早い針葉樹を使い、それを芯に、ラワンは表面のみとしたわけです。熱帯材は植林されておらず、また自然再生のペースの10倍くらいの速さで伐採されているため、すぐに資源枯渇や森林破壊につながります。現地に住む人達のためには、持続可能な森林利用の研究は不可欠でありますが、熱帯林は樹木が数十mと背が高く、地表からの観察では森林全体を把握することは不可能であります。そこで私どもは、熱帯林内部の垂直方向の各種自然環境を分析調査するため、92年タイ国南端部に熱帯林観測塔を建設し、現地の研究機関に寄贈いたしました。 次に砂漠化の問題であります。完全に緑のない砂漠から、塩類の集積で農耕不能となった荒廃地まで含めて砂漠化地域と呼ばれております。砂漠化地域に安定的な水資源が供給されれば、農耕地や森林としての土地の利用価値が増大します。暑くて乾燥した地域には、在来型の貯水池では水分が蒸発して有効ではなく、地下ダムによる水資源の開発が最適です。私どもは沖縄や若狭湾沿岸など水不足地域で、海水を遮断する多数の地下ダムを建設してきました。地下ダムは先程ご説明しました、オウスソレタンシュ工法やそれに類する工法を活用して、地下コンクリート構造物を構築するものであります。こうした技術を海外の砂漠地域にも適用したいと努力を重ねております。 熱帯林を再生したり砂漠を緑化するには、大規模な植林も必要であります。すでにパルプ原料用の大規模植林は経済的に成立する時期にきておりますが、在来樹種による環境造林の技術は未完成でありました。最近、円借款によるメキシコ政府のプロジェクトとして、当社の施工によりメキシコ市に完成しました世界最大規模の環境造林用幼木生産施設があります。環境緑化の他、ユーカリはパルプなどの資源を確保するため、そして松や樫の木は火山灰の舞上がりを防ぐ防風林をつくるための幼木生産施設となっております。植林予定地の在来種から種子を採取し、優良種を選別したのち温室で発芽させるわけです。その後、露地に移植して半年育成し、遠くに見えます山麓に植林されます。この施設の能力は、日産32万本で、年間2万haが植林され、粉塵を減らしながら毎年8万tの炭素が固定される見込みであります。 もう一つ、中国における大規模植林の話をさせていただきます。中国における植林には、その特異性として砂漠化の防止と洪水対策があります。中国にはゴビ砂漠や、トングリ砂漠、タクラマカン砂漠などの砂漠及び砂漠化した土地が、国土の16%を占めています。そして毎年210万haということは、神奈川県の面積のおよそ8.7倍に当たりますが、それだけのものが砂漠化進行中といわれております。 もう一つは、大規模な森林伐採に起因する大洪水の問題であります。丘陵の頂上まで森林が伐採され、段々畑をつくるために開墾したことで、土壌の浸食が激しくなり、ガリ、つまり欠落している部分が発達しています。また黄土高原一帯はかつて森林地帯でした。秦の始皇帝が万里の長城を築くため煉瓦を焼き、また毛沢東時代には製鉄産業を振興するため森林を伐採して燃料として使用したため、裸地になったと言われております。ここにも土壌の浸食がみられます。これが黄河の濁りの原因であり、春先に日本に飛来するおびただしい黄砂にもつながるわけです。今年8月、中国の長江流域を中心に大規模な洪水の被害が発生しましたが、一方、黄河流域においてはしばしば大渇水が発生しています。河川の上流で開墾や、燃料とするための大規模な森林伐採が行われることによって緑地が失われ、土の保水能力が低下するとともに、土壌の浸食により土砂が砂防ダムを埋め、それがダムの決壊につながり、長江や黄河といった大河川の下流域では洪水や渇水が起きるわけであります。 このように中国における植林は、砂漠化の防止、洪水や渇水対策、環境緑化による地球温暖化防止、そして農業用水や工業用水、発電用水をまかなう水資源としての活用という目的があるわけであります。 8月末、日中経済協会訪中代表団の一員として訪中いたしました。中国の国家主席である江沢民氏も、日中共同プロジェクトによる大規模植林に大きな関心を持っておられました。日中間では、政府間ODA(official development assistance)や、NGO(non governmental organization)によるいくつかの森林造成プログラムが進行しておりますが、民間レベルにおいても経団連に植林協力部会を設け、メキシコでの大規模植林技術などを活かし、実効性のある日中植林協力の在り方を検討していく予定であります。 また、砂漠の緑化には土壌改良も不可欠であります。これは湾岸戦争で原油流出被害を受けたクウェートの砂漠を緑化しようとしている風景であります。砂漠の土壌には原油の蒸発残留物が堆積していますが、当社は微生物を用いて大量の表土を低コストで処理し、植物の生育に支障がない程度まで原油分を分解することに成功いたしました。後は植樹して緑が育つのを待つばかりとなっております。 さて次にご紹介いたしますのは、環境関連技術を活用し、地域産業の活性化を図ろうとしている地方自治体の実例であります。ゼロエミッション事業のはしりと言えると思います。 企業から排出される廃棄物、家庭から出るゴミなどは、その処分の仕方が非常に難しいものであります。しかもその発生量は一向に減少せず、さらなる分別収集と個別の処理方法の開発には、大きな期待がかかっております。ここ数年の産業廃棄物の動向を見ますと図のようになっております。排出総量は微増でありますが、減量化のみやや進んだものの、再生利用と最終処分量は横這いの状況が続いているわけです。さらに、最近になってダイオキシン、環境ホルモンなどゴミ焼却最終処分場の問題が新たな難問を引き起こしているわけであります。一方この表でも、残念ながらわが建設業界は2番手におります。しかし先程申し上げた長寿命化のトレンドで、削減の余地は大きいと思っております。しかし4年前の阪神淡路大震災では、大量の解体廃棄物が一時に出たわけであります。これも検収が終わりまして解析しますと、ちょうど三人家族で100uの家屋から100tの産業廃棄物が出たことになります。ちょうど一人当たりのゴミ排出量は一日当たり1sでありまして、三人家族が一年で排出する量は1tであります。したがって100年分の廃棄物が一時に出て、それによって2、3年かからないと処理ができなかったということがありますが、将来に備えていた処理場が既に満杯に近い状況になっております。 一方最近では、20世紀工業文明の大量生産、大量消費、大量廃棄から、21世紀はメタボリズム文明に移るべきだ(循環代謝)とも言われます。またわれわれ工学系の技術屋にとっては、動脈系の工学ではなくて静脈系の工学をもっと進めるべきだというような考え方も出てまいりました。たまたまその頃、京都府八木町で地域エネルギーのビジョンづくりを始めていまして、もう既に太陽光発電は実施されていました。さらにもっと先を見た良いものはないかという時に、私どもが提案したのが「大林BIMAシステム」であります。このライセンスを持っているのは、オーストリアのENTECという会社でありまして、今やヨーロッパ、そしてアジア地区で45くらいの実績を持っております。それを持ち掛けましたところ、一応プロポーザル競技方式で性能発注ということになりまして、いろいろな条件を与えられたわけですが、私どもの提案をよしとして仕事が決まったわけであります。 このBIMAシステムは有機系廃棄物の処理に適したシステムであります。この中心となる技術はメタン発酵で、この方法は嫌気性消化、要するに酸素がなくても発酵が進むというわけです。また単に消化とも呼ばれております。有機物をメタン発酵させますと、有機物が分解されて固形物が少なくなり、さらにメタンを約65%程度含む消化ガスが発生します。このBIMAシステムでは、BIMA消化槽と呼ばれる特殊な処理槽を利用します。このBIMA消化槽の最大の特徴は、廃棄物から発生する消化ガスの圧力をエネルギーとして利用することであります。消化槽内の攪拌は3時間サイクルで無動力で行うことができ、コストが大幅に低減されます。無動力攪拌のBIMA消化槽を中心に、発生する消化ガスを溜める、ガスを利用し電気や熱を得る、消化の終わった廃液を脱水処理する、脱水した固形物を乾燥させ堆肥にする、脱水液を浄化する施設などを組み合わせることで、廃棄物のトータル処理が可能になりました。このトータルシステムを「大林BIMAシステム」と呼んでいるのです。 先程の八木町は、京都市から30qほど北西へ離れた町でありまして、主な産業は農業、畜産、林業、そして商工業であります。この町には、この施設を利用する牛が800頭、豚が1,500頭いるわけであります。この施設の費用でありますが、大ざっぱに言いまして11億円ほどかかったわけです。そのうち6割が国庫の補助金でありました。そして研究開発費は私どもの負担でありまして、今の金額には入っておりません。このようにやはり経済性を追いかけて環境に万全であるものをつくるというのは、まだまだ難しい。それをまさに体感したわけです。 「八木バイオエコロジーセンター」は、畜産ふん尿と有機系廃棄物を利用したメタンガス発電と、肥料製造の両方を行う施設であります。このような施設が自治体主体で建設されたのは、わが国では初めてでありまして、早くから注目されてまいりました。運転開始後にも自治体などからの見学者が相次ぎ、また廃棄物処理のエンジニアリング分野へ進出しようとしているプラントメーカーからも注目されております。中国の江沢民主席が北海道の酪農家を視察され、その時のニュースが伝えられましたが、自動搾乳にポイントが置かれており、またこの施設はまだ北海道にはないため、ご存じなく帰られたのが残念でありました。 廃棄物がこのシステムの中で、どのように処理されていくかをご説明いたします。 まず、乳牛や豚のふん尿などは受け入れ施設で細かく粉砕されたのち、食品工場から排出される‘おから’とともに消化槽に送られます。これら有機性廃棄物は、約1ヵ月の間バクテリアによって消化され、消化液と消化ガスに分解されます。ガスホルダーに溜められた消化ガスは、ガスエンジンの燃料として使用し、発電機を回して電気を発生させます。この電力はプラントで使用する機械の動力や、場内の照明に使います。排熱はBIMA消化槽の加温に使用し、さらに管理室の暖房や給湯にも使えます。消化液は脱水機により固体の脱水ケーキと脱離液に分離されます。この脱水ケーキは、肉牛のふんと合わせて堆肥化し、脱離液は排水処理をして河川に放流されます。一日当たりの処理量は、乳牛ふん尿約33t、豚のふん尿8t、おから約5tです。発生する消化ガスは一日に約2,000?、排出する処理水は一日に約37t、堆肥の原料となる脱水ケーキの発生量は一日に約10tであり、発電量は一日最大3,200kW/hが確保できます。 なお余談になりますが、八木町のバイオエコロジーセンターで問題点が二つあるそうです。まず第一は、人材難です。牛や豚のふん尿処理施設に、喜んで来てくれる人がなかなか見つからないそうです。しかし今は3人は確保できたということです。3人で済むということは、それだけ自動運転が組み込まれているということでもあります。 第二の問題が、規制の緩和です。ガスホルダーの形式が、普通のガス事業法で同じように規制されているため、当初ガスタンクのような鋼板でできた頑丈なものしか認められておらず、今回の膜構造は個別の申請によって、やっと認可されたわけであります。さらに発生した電力を電力会社に売るには、単独運転検出装置というものが必要になりますが、日本は電気事業法などによりハイレベルな技術基準が課せられ、結局イニシャルコストが高額になります。このようなことが、小容量の発電における売電の実現性に影を落としております。このような分野にも規制緩和を是非進めてほしいと思います。 一言付け加えますと、このような有効成分の少ない原料を扱うリサイクル施設と、規模の経済の中で、効率を追う工業生産施設との間には大きな差異があります。所与の条件でプラスであったのは、一日5t発生するおからの処理があったことです。おからには有機物が多く含まれ、消化により大量のメタンガスを発生します。昔は家畜の餌であったおからも、人工飼料に頼る今の牧畜業では敬遠されています。しかしここでは、BIMA消化槽でドッキングし、“共生”の成果をあげているのです。一方マイナスの条件としては、施設を拡大しても流通コストが上昇すること。さらに行政区画が限定されているため、規模を追うには限界があるということであります。 これは投入量と発電量の累計を示したグラフであります。今年4月20日に投入開始後、以降システムは順調に立ち上がっています。しかし、10月に入り投入される原料の濃度や量などが、設計条件と大幅に異なった状況が続き、2回ほど投入を停止せざるをえない事態が続きました。現在はそのような投入状態の変動に幅広く追随できるよう改良を加えまして、順調に運転を続けております。 このように先程北海道の話も申し上げましたが、あるいは藤沢の養鶏場もそうかも分かりません。さまざまな各地の条件に合わせた同様の施設が増えてくれば、新しい形で地域、地球環境の改善に役立つのではないかと思っております。 以上、建設産業における環境問題への取り組みの一端について、お話させていただきました。メーカーと異なる受注、そしてエンジニアリング産業とも言える、現地組立の立場をご理解いただけましたでしょうか。 さて、技術開発につきまして私が感じておりますのは、少しでもゆとりのある時に、より社会性のある次元の高い目標に向かって、進むべきだという点であります。私が直接関わりました地域環境問題も、当初は間に合わせ的な処置とのコスト比較などで苦労もありましたが、周辺技術をレベルアップし、システムとしての付加価値を高めることで評価を得ました。せまい選択のプロダクトアウトではなく、技術商品作りのマーケットインへの転換が大事だったと思います。 しかし今、右肩上がりの経済成長も終わり、建設業も不況にあえぎ、研究開発の費用も圧縮せざるをえず、一方では環境問題も地域から地球へと場が拡大するとともに、その内容が日増しに複雑になっております。今後の技術開発につきましては、世界の動向をつかみ環境問題を一つのテーマとして方向性を定め、技術開発を進めることが大事だと思います。その上で総合性を高めるためのアウトソーシング、社会科学系も含めた産・官・学との協調は、さらに進めるべきだと思っております。 皆さんに考えていただくヒントとして一言申し上げますと、環境先進国は一応ドイツ、オランダとされております。数日前、NHKでも放映もされていましたが、その他のことも加えまして、三つの事を申し上げます。 ドイツでは90年に環境保護法が成立しまして、刑事罰も含む強力な行政が実施されております。将来EU統合を控え、やるとなると徹底するのがドイツであるのかと思っておりますが、まずその一つで、GDPの1.8%が、すでに環境ビジネスとして成功しているということです。先程の大林BIMAシステムではないですが、なかなかビジネスとして成功するのは難しいと思うのですが、環境保護の企業姿勢を評価して格付けを行い、投資家に資料を提供する、投資家はそこを通して情報を得るというようなビジネスが成立しているのです。 また通販は、自分の意志で買い付けをできるわけですから、メーカーの環境取り組み姿勢を評価し、環境取り組みの進んだ製品を買わないと自分のビジネスもやっていけないということで、通販もそういう方向転換をしているということなのです。いろいろな問題を含んでおり、日本ではなかなかすぐにはうまくいかないと思います。 今年の春に見てきたのですが、テレビでも時々出ておりますが、今ベルリンでポツダムプラッツの再開発が大々的に行われ、ベンツ、そしてソニーなどが大きな施設をつくっております。その横に動物園があるわけですが、この地下工事に際して水位を下げたら大変だということで、地下工事が終わって何ヵ月かたつまで、まるで工場のラック配管のようなものが道路の上にありました。日本ではなかなかそこまではやらないなという気がしてみておりました。 また最近日本で売り込もうとしているドイツの技術でアウトバーンの植林事業があります。これは分離帯に小さな花の咲くような植物ではなくて幹として太る、ということは炭素固定に役立つような植林をやりまして、そしてある程度成長したところで刈取って植えかえる。アウトバーンは相当国土に広がって、延長距離も長いわけです。そこで刈取った木を粉砕して、発酵させて有機土壌に仕上げる。そのために4台のトラックをおいて、そして広域に走り回って処理をするようになっているというようなことも行われております。 そういう意味から今後地球環境問題について、個々の問題を解決していくためには、やはり先程20世紀工業文明化だと申しましたが、質の追求をする必要があるのではないか。価値観の転換も当然あります。その結果、少しくらい高くてもいいものを選ぶのだという、市民意識が育てばなと思っている次第であります。 本日、こうして皆さんに環境問題の取り組みをご紹介できる機会を得ましたことを、深く感謝しております。なお、本日の私の講演内容につきましては、インターネットホームページに掲載いたしましたので、是非ご覧ください。 ご清聴ありがとうございました。 【質疑応答】
竹中:津室副会長、どうもありがとうございました。 Q:先程の下関にあるという200m級の煙突に関してなのですが、煙突を高くしても自分の周りから問題を見えなくするだけで、排出量そのものが減るわけではなく、根本的には何も解決しないのではないかなと考えたのですが、その辺の詳しいお話をお聞かせください。 津室:これをつくりましたのは25年くらい前です。当時は拡散、要するに接地濃度を下げるためには面積を広げる。広げるためには煙突を高くして、風によって遠くへ飛ばすということです。昔はそうだったのです。途中で申し上げたように、今は脱硫の施設がだいたい建設費の10%UPくらいでできるようになっていますから、ほとんどの大規模の煙突は脱硫装置を付けています。全く付けていないのが中国なのです。これからの問題だと思っています。 竹中:今日のお話を通して、東京駅をはじめ、津室さんのお仕事というのは、非常にわれわれの身近なところにあるということもよく感じることができました。またわれわれが日頃馴染みのない建設の技術について、非常に懇切丁寧にお話をいただけたというふうに思います。ありがとうがざいました。
Feedback to postmaster@zeroemission.co.jp |