△まず新NISAでがっちり体制固めをしましょう
政府は今年(24年)1月1日から新しいNISA制度をスタートさせます。NISAとは小額投資非課税制度のことです。現行制度では、株式や投資信託の売却益、株式の配当金、投信の分配金には20%強の税金かかります。たとえば、株式投資で年間10万円儲けても、約2万円が税金でとられ、手取りは約8万円に減ってしまいます。NISA口座を開設すれば、10万円そっくり手に入ります。新NISAの投資枠は最大1800万円(成長枠は1200万円)へ拡大、生涯非課税になるので従来のNISAと比較して大きなメリットがあります。
政府が従来のNISAを大幅に改善、投資魅力を加えた理由は、家計部門の巨額の貯蓄を投資に振り向けることで、経済活動を活発化させようとする狙いがあります。「貯蓄から投資へ」の促進です。
日本の家計の金融資産構成を欧米と比べると、現金・預金比率が圧倒的に高くなっています。日銀資料によると、23年3月末現在、家計の金融資産総額は約2043兆円。このうち半分強の54.2%を現金・預金が占めています。株式比率は11.0%、投資信託は4.4%に過ぎません。これに対し、アメリカの場合、現金・預金比率はわずかに12.6%。逆に株式比率は39.4%、投資信託11.9%です。ヨーロッパは現金・預金と株式、投資信託などの割合が3割強です。
日本の場合、1000兆円を超える金融資産が現金・預金のため、企業の新規工場建設や先端技術、研究開発部門にお金が回らず、経済が低迷しています。アメリカ並みまでは無理としても、せめて現・預金の3~4割程(約300~400兆円)が投資に振り向けられれば日本経済は元気を取り戻し、再び成長路線に復帰できます。新NISAにはそんな政府の願いが込められています。
△目立つ企業の株式分割の動き
新NISA制度のスタートを前に、企業の株式分割の動きが活発になっています。現行の株式取引の最小取引単位は100株です。株価3000円の銘柄を購入するためには、30万円のお金が必要です。株価が1万5000円なら、150万円用意しなければなりません。購入したい銘柄でも価格が高過ぎ、余裕資金の少ない個人投資家には中々手が出ません。
そこで多くの優良企業が株式分割に乗り出しました。分割すれば株価は下がります。1株1万5000円の株式が3分割されれば、新株の価格は5000円になります。150万円は無理だが、50万円なら購入できる個人投資家は少なくないでしょう。企業にとっても、新NISA導入を機に、多くの個人投資家に自社株を保有してもらいたいと願っています。
売買手数料の無料化に踏み切るネット証券会社も出てきました。
△ネット証券会社、売買手数料無料化の動き
ネット証券最大手のSBI証券と同2位の楽天証券が9月末以降、相次いで日本株の売買手数料の無料化に踏み切りました。無料化は国内証券会社で初めてです。新NISA開始を前に個人投資家を呼び込む狙いがあります。SBI証券は9月30日の注文分からオンライン取引を対象に日本株の現物取引と信用取引の両方の売買手数料をゼロにしました。ネット証券会社の中には、取引手数料が収入のかなりを占めるところもあり、新NISA制度導入を機に、ネット証券業界の競争は一段と激化しそうです。
△手帳の購入者は、新NISA制度を上手に活用してください
「ネット株手帳2024」購入の皆さんは、新NISA制度をフルに活用し、配当金、適正価格(購入しやすい価格)、将来の成長力、経営の安定度(たとえば、PBR=株価純資産倍率)などを勘案しながら、欲張らず、ほどほどの利益を継続的にゲットできるように、手帳記入を続け、あなたなりの相場観を養成してください。ご健闘、願っています。
(注)新NISAには「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の二種類ありますが、以上の説明は「成長投資枠」を主に対象にしています。
(2013年11月記)
三橋規宏