プラスチック資源循環促進法, ライフスタイルの転換, レジ袋の有料化

SOS地球号(270) 脱プラ法施行1ヶ月、まずは穴あけスプーンなどから

削減対象、ストロー、フォーク、マドラーなど12種類

 企業にプラスチック使用の削減を求める「プラスチック資源循環促進法」(以下脱プラ促進法)が先月4月1日に施行されてから約1ヶ月が過ぎた。使い捨てプラスチックを削減するため、環境省が中心になり2019年5月に「プラスチック資源循環戦略」を策定した。この戦略に沿って20年7月にレジ袋の有料化が実施された。今回の脱プラ促進法の施行はそれに続くものだ。第三弾は海洋プラスチックごみの削減規制である。ただ海洋プラごみの場合は各国が協力して実施しなくては効果が得られない。このため国連環境総会が3月初め、海洋プラスチックごみの削減を目指して法的拘束力のある国際枠組を作成することを決めた。国際枠組の具体的な形態については今年後半に政府間委員会を立ち上げ、細部を詰め、24年末までに作業を終える。当然日本も国際枠組に参加するため、国内法を作成、成立させることになる。早ければ25年中に実施の見通しだ。

 4月に施行された脱プラ促進法の削減対象になるのは小売店、宿泊業、飲食店、持ち帰り・配達飲食サービス業などが配るストロー、フォーク、スプーン、ナイフ、マドラー。ホテルなどの宿泊業が使っているヘアブラシ、クシ、カミソリ、シャワーキャップ、歯ブラシ、小売業(衣服など)、クリーニング店が使うハンガー、衣類用カバーの12種類。

 環境省は削減方法のガイドラインとして、3R(リデュース=減量、リユース=再利用、リサイクル=再生利用)+再生可能資源の活用をあげている。具体的には①減量・削減を目的とした有料化、ポイント還元、消費者への意思確認、軽量化や原材料の工夫、②繰り返し利用可能な製品の提供、③木製のフォークやスプーン、紙製のストローなど再生可能な資源の活用ーなどだ。

 

木製スプーン、紙製ストローなどが登場

 施行後1ヶ月が過ぎたが、規制対象企業の取組みは進んでいるのだろうか。大手コンビニのファミリーマートは持ち手に穴を開けた軽量化スプーンとフォークの導入を今年初めから実施している。スプーンの場合は従来品と比べ約12%プラスチックを削減、フォークの場合は約8%削減できるそうだ。1月25日から関東、東海、甲信地方約8700店舗で導入、今夏までに全店舗に拡大させる。これによってスプーン、フォーク合わせてプラスチック量を年間約87トン削減できると推計している。同社は近い将来、プラ製フォークを全廃する方針も明らかにしている。

 ローソンも穴開けの軽量スプーンやフォークを増やしている。同社は昨年8月から都内の一部店舗で木製スプーンの提供を実施している。

 スターバックスコーヒージャパンは昨年秋に全ストローを紙製に切り換えた。この他、プラ削減対策として蓋(蓋)無しカップへの切り替えを進めており、夏頃までに全国約1700店舗で展開する。

 プラスチックに植物性素材を配合することでプラスチックの減量に取り組む動きも目立つ。ちゃんぽん店を展開するリーガーハットは持ち帰りで提供するスプーンについて4月1日からバイオマス素材を25%配合したスプーンの提供を始めた。

コンビニのセブンーイレブン・ジャパンもバイオマス素材を30%配合したスプーンやフォークを4月1日から順次導入している。帝国ホテルでは歯ブラシやクシなどを竹や木材製に切り換える準備をしている。

 

有料化は削減効果が大きいが・・・

問題はプラスチック減量に伴うコスト増だ。バイオマス素材を配合した場合は、従来品と比べコストは3〜5割増、ローソンの木製スプーンは約3倍に跳ね上がる。

 使い捨てプラの削減に当たっては企業だけの努力には限界がある。利用側の消費者の協力が欠かせない。その場合、有料化は最も効果が大きい対策だ。レジ袋の有料化によって、マイバック持参の消費者が増え、利用者の約75%はレジ袋を必要としなくなった。今回対象になった使い捨てプラ12種類も有料化にすれば大きな効果が見込まれる。さらに「スプーンやフォークをお付けしますか」などの声掛けもかなりの効果が見込めるそうだ。しかし、王将フードサービスのように持ち帰り用スプーンを1本5円で有料化に踏み切る企業は、むしろ例外で、規制対象企業の多くは「軽量化や素材変更でプラ製品の削減」に取り組んでいる。有料化による客離れの心配が強いためだ。当面は試行錯誤を繰り返しながら最善のプラ削減対策を見つけたいとする企業が多い。

 

ライフスタイル転換の第一歩に

今回対象となる12種類の使い捨てプラの年間排出量は廃プラスチック全体の約1%を占めるに過ぎない。レジ袋の場合も廃プラ全体に占める割合は微々たるものだったが、有料化によって買い物袋持参の人々の環境意識は大きく変わった。今回の脱プラ促進法は直接的には使い捨てプラスチック製品の削減を目指すものだが同時に将来世代に健全な地球を引き継ぐことが現代世代の大切な義務だとする新しい価値観を身につけ、使い捨て型のライフスタイルを転換させる第一歩として位置づける視点が欠かせないだろう。

(2022年5月13日記)

作成者: tadahiro mitsuhashi

三橋規宏 経済・環境ジャーナリスト 千葉商科大学名誉教授 1964年、日本経済新聞社入社。ロンドン支局長、日経ビジネス編集長、論説副主幹などを経て、2000年4月千葉商科大学政策情報学部教授。2010年4月から名誉教授、専門は経済学、環境経済学、環境経営学。主な著書に「新・日本経済入門」(編著、日本経済新聞出版社)、「グリーン・リカバリー」(同)、「環境経済入門4版」(日経文庫)「サステナビリティ経営」(講談社)、「環境再生と日本経済」(岩波新書)、「日本経済復活、最後のチャンス」(朝日新書)など多数。中央環境審議会委員、環境を考える経済人の会21(B-LIFE21)事務局長など歴任。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です