二つのエコ関連法の成立に思う
今国会(常会)は150日間の会期を終え今月16日に閉幕した。今国会では二つのエコ関連の法律が成立した。一つは先月26日に成立した「改正地球温暖化対策推進法」、もう一つは今月4日成立した「プラスチック資源循環促進法」だ。
温暖化対策法は国や自治体、企業や国民が取り組むべき気候変動対策を推進する法律で1998年に成立した。その前年の97年、京都でCOP3(国連気候変動枠組条約第三回締約国会議)が開かれ、温室効果ガス(GHG)の排出削減を定めた京都議定書が採択された。日本は90年比で2012年末までにGHG排出量6%削減を約束した。温暖化対策法は6%削減を実現させるための法律として誕生したのである。その後何回か細かな改正が行われ、今回の改正は5年ぶりだ。それまでの改正と比べ今回はかなり具体的な内容になっている。
50年炭素排出ゼロ目標を明記
最大の特徴はパリ協定を視野にいれ、「2050年までに脱炭素社会(50年排出ゼロ)実現」の方針を明記したことだ。政権が代っても将来にわたる政策の継続を国内外に約束したことになる。
第二に市町村があらかじめ経済性や地形、地域住民の了解などを満たしたエリアを「促進区域」とし、太陽光発電所や風力発電所などの再生可能エネルギー事業を誘導することだ。再エネについては騒音や景観悪化、自然破壊などでトラブルが各地で発生している。太陽光発電を錦の御旗にして、里山の森林伐採などを強行する事業者もおり、地元住民との対立が激化しているところもある。地域住民の理解が大切なのは言うまでもない。改正温暖化対策法は22年4月から施行される。
廃プラスチックの削減義務
一方、プラスチック循環法は新法である。プラスチック廃棄物の削減を目指すことを目的にしている。小売店や飲食店で使い捨てストローやスプーンなどの削減が義務づけられる。使い捨てのストローやスプーンを無償で提供してきたコンビニや外食チェーンなどは有料化や代替素材への転換を求められる。対策をとらない企業は国から指導や改善命令を受ける。違反を繰り返す場合は50万円以下の罰金を科す。製造業者に対しては設計や製造の段階から環境配慮が求められる。プラスチックの使用量を抑えた製品や解体が容易でリサイクルしやすい製品を国が認定し、ロゴマークを付ける仕組みを始める。16年のダボス会議で「50年には海中のプラスチックごみの重量が魚のそれを超える」とのショッキングな報告があった。すでに多くのコンビやスーパーはレジ袋の有料を実施している。包装メーカーの間では生分解性のプラスチックや代替紙製品の開発・製造・販売に乗り出しているところもある。新法は改正温暖化対策法と同様22年4月から実施さあれる。遅きに失した感があるが歓迎できる。
国民に何ができるかの言及が不明確
来年4月から施行される二つのエコ関連法には共通する大きな欠点がある。法律の効果を高めるためには、消費者の顔をも持つ私たち国民一人一人が日常生活の場で省エネやプラスチック廃棄物の削減に積極的に取り組む必要がある。二つの法律は政府や自治体、企業などの取り組みについては具体的に言及しているが、国民一人一人が日常生活の場で何ができるか、何をすべきか、について明確に言及していないことだ。
未来世代のために「やせ我慢の生活」に挑戦してみたら・・・
筆者はこのシリーズ(緑の最前線)で、未来世代のために現代世代がなすべきことは,「健全な地球を引き継ぐことだ」と指摘してきた。私たち人間の一生は長くても100年に過ぎない。それに対し未来世代は走者を代えて、半永久的に健全な地球を次世代に次々とバトンタッチするゲームの参加者だ。駅伝に例えれば、グリーンランナーとしての役割である。現在世代が豊かで便利な生活をするために次世代に破壊され傷つき住みにくくなった地球を引き継ぐことはランナー失格である。
再エネだけで電力供給が賄えないなら、さらなる節約の徹底、時には停電も受け入れる。不便でもプラスチックナシの生活に挑戦してみる。飽食の時代に慣れきってしまった我々現代世代は、この際、「やせ我慢の生活」に挑戦してみてはどうか。
(2021年6月15日記)