気候変動,凶暴性強まる
地球温暖化が原因の気候変動が激しさを増している。異常気象が常態化し今年も北半球の日本、欧州、北米は猛暑に襲われた。1カ所に集中的に降る豪雨、それに伴う洪水、山崩れなどの災害も目立つ。台風も大型化し凶暴化している。生態系も世界のあちこちで破壊され、生物種の絶滅スピードは1日に約100種と推定され、このままでは25〜30年後には地球上の全生物の4分の1が失われてしまうという試算もある。森林火災も世界中で発生している。カリフォルニア、シベリア、インドネシア、さらに今年のアマゾンの森林火災は空前の規模に達し、このまま放置すれば世界の酸素の20%を供給する大森林地帯が近い将来砂漠化してしまう、と警告する科学者もいる。カナダ北部の森林火災はこれまで少なかったが今年は異常気象による気温上昇と空気の乾燥で大火災に拡大したそうだ。
18カ国、970自治体が表明
地球の気候は明らかに異常性を増している。本気で取り組まないと悪化する気候変動を食い止めることができなくなる、こんな危機意識からこの数年、「気候非常事態宣言」(Climate Emergency Declaration=CED)をする地方自治体が欧米中心に急増している。危機を共有し温暖化対策や生態系の維持、保全に全力で取り組む決意表明が緊急課題になってきたためだ。
この運動を呼びかける団体(国際気候非常事態フォーラム・ICEF)によると、これまでに18カ国、970の自治体(住民総数約2億600万人)が非常事態宣言を表明している。CED自治体が多い国としてはカナダ(447)、英国(318)、ドイツ(38)、オーストラリア(39)、米国(26)などの欧米先進国が目立つが、アルゼンチンやフィリッピンなどの開発途上国の自治体も数は少ないが宣言に参加している。
さらに今年5月〜7月には英国、アイルランド、ポルトガル、カナダ、フランス、アルゼンチンが国家として非常事態宣言を発表した。
非常事態宣言が必要になってきた背景には世界人口の急増、それを支える経済活動が地球の限界を超えてしまったことが指摘できよう。
人口も、経済活動も地球の許容限度を超えてしまった
「77億人の世界人口が日々大量の資源エネルギーを消費し、大量の廃棄物を排出しながら各人の幸福を追求している今日の文明が生態系や地球環境に膨大な負荷をかけていることは容易に想像される」とこの分野の専門家、山本良一東大名誉教授は指摘している。
地球の許容限度に合わせて生活しなければ、地球温暖化はさらに進み、気候変動は様々な姿になって人類社会を攻撃し、人類の生存条件を奪ってしまうことは明らかだ。
地球温暖化対策としてはパリ協定による温室効果ガス削減の国際条約が来年からスタートするが、欧州では政府任せ、国任せだけではなく、個人ベースでも、やろうと思えばやれることがたくさんある、まず「隗から始めよう」との機運が盛り上がっている。
欧州では夜行列車が復活、利用者急増
そのひとつが夜行列車の復活だ。欧州の夜行列車はこの数十年飛行機に押され衰退気味だった。しかし大量の温室効果ガスを排出する飛行機を避けて夜行列車を利用しようと呼びかけてきた環境NGOなどの運動が浸透し、利用者が急増している。
スウェーデンの環境活動家の16歳の少女がニューヨークの国連本部で開かれる気候サミットへ参加するため、飛行機を避けヨットで2週間かけて大西洋を横断する行為が大きなニュースとして報道された。脱飛行機へのアピールである。
残念だが日本ではまだ気候非常事態宣言をする自治体はない。山本教授らは辛抱強く全国の主要な自治体に宣言を呼びかけると同時に、大学や各種の学術団体、環境に熱心な経済団体などにも同様の呼びかけをしている。
危機感乏しい日本
福島原発事故以降、石炭火力にしがみつく日本の温暖化対策は欧州と比べ大幅に遅れている。今回の「気候非常事態宣言」の動きについても、対岸の火事を眺めるような危機感なしの日本の消極的な姿勢に驚きを禁じ得ない。
(2019年9月11日記)