○ 年金だけでは生活できない
「高齢化社会における資産形成・管理」と題する金融庁・金融審議会の報告書が、野党の反発を受けて麻生太郎金融相が受け取りを拒否する騒ぎになりマスコミが大きく取り上げたのでご存知の方も多いと思う。報告書は人生100年時代を楽しく健やかに過ごすためには年金以外に2000万円が不足すると指摘している。
たとえば年金生活の高齢夫婦(夫65歳以上、妻60歳以上)の場合、年金などの収入約21万円、支出約26.3万円で、月約5万円足りない(30年で2000万円不足)。
○ 所得代替率も先細りの現実
2000万円不足を裏付けるように、厚生労働省は先月下旬、公的年金の将来見通しを示す年金財政検証の結果を発表した。65歳で退職したときに受け取る年金額がその時の現役世代の平均収入の何%になるかを示す数値として所得代替率がある。19年度は現役世代の平均手取り収入月額は35.7万円、年金は22万円なので、所得代替率は61.7%である。30年後にはこの水準が2割も低下してしまう。
これらの数字を踏まえ野党は「政府は無責任だ」と批判するが、残念ながらこれらの見通しは極めて真実に近い数字と言わざるをえない。
現状の政府の財政事情から将来を展望すると、急速な人口減少を背景に今後低成長、マイナス成長時代が数10年続くことが見込まれる。財政不足は深刻化の一途をたどり、人生100年時代の高齢者を年金だけで支えることは不可能に近い。報告書の指摘は正しく、野党の反発に狼狽して金融相が受け取りを拒否するなどは笑止千万といえるだろう。「年金改革など政府は全力で取り組むがそれでも限界がある」と大臣は正論を述べる勇気が欲しかった。
○日本は社会主義国ではない
日本は社会主義国ではないので、老後の生活を政府が100%保障する仕組みにはなっていない。ただ平均的日本人が老後を楽しく健やかに過ごせるように、生活費のかなりの部分を賄うために年金制度が設けられているわけである。年金支給が多ければ多いほど望ましいが、財政事情がそれを許さない。年金で不足する部分は自助努力で各人が賄わなければならない時代になるのは避けられまい。報告書はこの現実を数字で示したに過ぎない。
○25年近く続くゼロ金利時代で、約900兆円の預貯金が死蔵されている
いま、政府・日銀に求められる対策は国民が自助努力で大切なお金(金融資産)を適正に運用できる制度設計だ.今の日本にはそれが存在しない。バブルが弾けた後、90年代中頃から実質金利ゼロ時代が今日まで25年近く続いている。家計部門の金融資産は現在約1800兆円ある。このうち約半分の900兆円が現預金で保有されている。仮に金利が年1%なら9兆円の利子所得が発生する。2%の利子なら18兆円になる。利子所得の一部が消費に回れば、消費需要が増え、経済成長にもプラスに働く。しかし現実には実質金利ゼロで預貯金は死蔵されたままだ。しかもこの状態は今後も続きそうなのである。
政府・日銀がゼロ金利を維持する目的は、低金利で企業に資金を貸し出すことで設備投資を促し景気拡大に結び付けるためだ。ゼロ金利は企業の設備投資を刺激することは確かだが、半面、個人がコツコツ働き貯めた金融資産を運用する道を閉ざすという決定的な過ちを犯している。
○ ゼロ金利の落とし穴から抜け出す方法—現預金の一部を株投資へ振り向けよ
政府・日銀が個人の金融資産の運用に消極的なら、国民は自助努力でゼロ金利の落とし穴から抜け出す以外に道はない。その一つの方法が現預貯金の一部をネット株投資に振り向け、利益をあげる道である。株といえば「ハイリスク、ハイリターン」の世界だが、ネット株取引時代の到来で、「ローリスク、ほどほど(ミディアム)リターン」が可能になった。元本を減らさず、投入資金の約1割を着実に稼ぎ出す手法である。株取引に伴うハイリスクの部分をできるだけ封印し、石橋をたたいて渡る慎重さで、一攫千金は求めず、年間1割程度の利益を着実にコツコツと積み上げるための知恵と手法がある。筆者が石橋攻略と名付ける手法である。
○50歳の現役が500万円を1割で運用すれば、定年直後に2000万円達成も
たとえば50歳の現役が将来に備え500万円の余裕金を貯めたとしよう。石橋攻略で運用すると、老後に必要な2000万円を何年で貯めることが出来るだろうか。
毎年、投入資金の1割を稼ぎ出し、それをすべて再投資する場合を考えよう。複利で計算をすると、500万円は8年目に2倍の1000万円になる。その8年後には2000万円を越える。元金500万円と稼いだ1500万円の合計だ。その時、彼はまだ66歳だ。
15%で運用すれば、5年後に1000万円に達し、10年後には2000万円に届く。
塵も積もれば山となる、である。筆者は石橋攻略で7年間、ネット株投資を続け、年間約15%の利益をあげることができた。安全第一で資産運用に取り組みたい人には向いている。石橋攻略を具体的に説明した著書「石橋をたたいて渡るネット株投資術」が最近海象社から出版された。