ISO14001, RE100, 自然エネルギー100大学

SOS地球号(230)  日本初の「自然エネルギー100%大学」を達成、千葉商科大の挑戦

ISO14001の認証取得で先行 

2月下旬、千葉商科大学(CUC)は、キャンパス内の消費電力と同じ量を自前の設備で発電できる体制が整ったとして、日本初の「自然エネルギー100%大学」を達成したと発表した。

 私事にわたって恐縮だが、CUCは私が新聞社を退職後、10年近く教鞭を執った大学だ。環境経済学が専門だったためエコキャンパスづくりに挑戦したいと思い、学生主導の「ISO14001」(環境マネジメントシステム)の認証取得に乗り出した。環境に関心を持つ学生が中心となりISO学生会議を設立し、数年かけて様々な課題を克服し、2003年3月末に認証を取得した。千葉県の大学としては最初のISO認証取得大学、全国の大学の中でも確か13番目か14番目だったと思う。

こんな経験もあり、CUCがエコキャンパスの新しい目標として、「自然エネルギー100%大学」を目指して頑張っていることは原科幸彦学長から折に触れて伺っていた。

キャンパス内の消費電力を自前の自然エネルギー発電で100%賄える大学は日本だけではなく、世界の大学の中でも珍しい。それだけにCUCの試みは環境に熱心な世界の大学からも注目されており、「どのように達成したのか」などの問い合わせが多いため、英文でも図入りの達成過程を説明している。

 

旧野球グランドを活用し、メガソーラー設置 

日本初の「自然エネルギー100%大学」の達成は,教職員、学生、そしてCUCエネルギー株式会社(CUC内に設立された地域エネルギー事業者)がスクラムを組んで取り組んだ成果だが、同時にCUCの置かれた特殊事情も幸いしたと思う。

 第一はCUCが校名でも明らかなように経済学や商学などを中心とする文科系大学だったことだ。電気を大量に使う工学部や医学部などの理系学部を備えた総合大学では、電気の使用量は文系大学よりはるかに多く、自然エネルギー発電だけで補うのは至難の業だ。その点文化系大学のCUCでは、電気使用が教室内照明、エレベーター、冷暖房、コンピュータ管理など通常のオフィスビルとそれほど変わらない。

 第二はメガソーラー(大型太陽光発電)の設置に恵まれた土地を所有していたことである。同大は野田市に野球グランド(約4万7千㎡)を所有しているが、現在は使われていない。そこにメガソーラー(大型太陽光発電)を設置することができたことだ。

 

キャンパス内の消費電力を自前の発電で賄う

具体的に説明しよう。

 CUCは2014年4月に同地に発電容量約2.88MW(メガワット)の太陽光発電を設置し、発電した電気を東京電力に売電する事業を始めた。17年度には年間約315万kwh(キロワットアワー)まで発電できるようになった。一方キャンパス内の電力消費は年間約365.1万kwhだ。この差、約50万kwhを埋めるため、キャンパス照明のLED化、自動販売機の集約・省エネ化、利用していない教室や冷暖房の消し忘れをチェックする節電パトロールの実施などに取り組んできた。その結果19年1月に電力創出がキャンパス内の電力消費をわずかに上回った(101.0%)。この結果を踏まえ自然エネルギー100%大学達成を発表した。

もっともこの段階では、キャンパスで使う消費ガスまでカバーできていない。自然エネルギー100%大学を実現するためにはさらに創エネ、省エネを推進する必要がある。CUCは2020年を目標に校舎屋上に太陽光発電の設置などによって出力を増やし、キャンパスで使うすべてのエネルギーを100%自前の自然エネルギー発電で賄う計画を掲げている。

 これで一件落着のはずだったが、記者発表で大学側が「RE100大学」と表現したため、一部の専門家から批判が出た。

 

「RE100大学」表示には批判

 RE100とは、「Renewable Energy 100%」の略称である。環境に熱心な企業が自社の事業活動に必要な電力のすべてを再生可能エネルギー(自然エネルギー)で賄うことを目標に掲げる企業が自主的に参加する国際的な取り組である。2014年に発足し,現在世界の140社を超える企業が参加、日本ではリコー、積水ハウス、イオン、城南信用金庫、ソニー、コープさっぽろなどの環境先進企業約15社が参加している。

 「RE100大学」を名乗るためには固定価格買取制度(FIT)で発電した電気は除外するというルールがある。固定価格で割高の電力を買い取った電力会社が、その分を電力料金に上乗せするため、最終的には電力コスト(環境価値)を消費者が負担するためである。このルールに従えば、CUCは「自然エネルギー100%大学」ではあっても、「RE100%大学」とは言えないという指摘だ。

 

さらなる自然エネルギー100%大学への挑戦に期待

 専門用語の使い方に油断があったことは反省すべきだが、同大が自前の太陽光発電でキャンパス内の消費電力をすべて賄える体制を確立したことは高く評価されるべきだろう。ガス消費も含め、自然エネルギー100%大学へ向けさらに挑戦してほしい。

 なお、同大はこれまでエコキャンパスづくりのキャッチコピーとして「自然エネルギー100%大学」は使ってきたがこれは今後も引き続き使用するが、「RE100大学」は使用しない方針である。

(2019年3月14日記)

作成者: tadahiro mitsuhashi

三橋規宏 経済・環境ジャーナリスト 千葉商科大学名誉教授 1964年、日本経済新聞社入社。ロンドン支局長、日経ビジネス編集長、論説副主幹などを経て、2000年4月千葉商科大学政策情報学部教授。2010年4月から名誉教授、専門は経済学、環境経済学、環境経営学。主な著書に「新・日本経済入門」(編著、日本経済新聞出版社)、「グリーン・リカバリー」(同)、「環境経済入門4版」(日経文庫)「サステナビリティ経営」(講談社)、「環境再生と日本経済」(岩波新書)、「日本経済復活、最後のチャンス」(朝日新書)など多数。中央環境審議会委員、環境を考える経済人の会21(B-LIFE21)事務局長など歴任。

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