トヨタ、2050年目標にCO2排出ゼロ目指す
日本を代表する企業が「脱炭素」に向けて積極的に取り組み始めた。トヨタ自動車は2年前の15年10月に2050年に向けた環境に対する取り組み「トヨタ環境チャレンジ2050年」を発表した。その柱は,50年に世界で販売する新車の走行時のCO2排出量(平均)を10年比で90%削減する目標だ。この目標達成のため、ごく一部の地域を除きエンジンのみの車をなくし、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、燃料電池車、電気自動車などのCO2の排出量が少ないエコカーを積極的に開発、生産し販売していく方針である。100%ではなく90%にしているのはハイブリッド車やプラグインハイブリッド車がエンジンを搭載しており、厳密な意味で100%は難しいと判断しているためだ。
さらに加えて、50年に工場からのCO2排出をゼロにする目標も掲げている。工場設備のスリム化や工程の改善、改良、廃熱の回収利用によるCO2排出量の削減、CO2を排出しない電力や水素エネルギーの利用などあらゆる対策を組み合わせてCO2排出量ゼロに取り組む意欲的な内容になっている。
仏,英政府40年までにガソリン車,ディーゼル車の販売禁止
脱炭素の動きは環境対策に熱心な仏政府、英政府が今年7月、2040年までに国内でのガソリン車やディーゼル車の販売を禁止すると発表した。CO2対策だけではなく、大気汚染の改善など環境対策を加速する狙いもある。大気汚染に苦しむ中国も電気自動車の普及に全力投球の姿勢を見せており、トヨタの取り組みは、そうした時代の大きな流れを意識した動きと言えよう。
ソニー、自社のCO2排出量20年までに42%削減(2000年比)
脱炭素の動きは自動車だけではない。電子機器メーカーのソニーは、昨年11月に「ソニーグループ環境計画と再生可能エネルギーの導入」計画を発表した。50年に環境負荷ゼロ(炭素ゼロを含む)を目指すためのロードマップとして、2020年度までに①製品の年間消費電力を平均30%削減、②自社の温室効果ガス(GHG)の排出量を2000年度比42%削減、③再生可能エネルギーの活用により、自社のCO2排出量30万トン削減—などを掲げている。この目標を達成することで、最終目標の50年度に炭素ゼロを実現させ計画だ。
富士通、パナソニックも50年に脱炭素達成へ
今年に入ると、企業の脱炭素への取り組みに拍車がかかってきた。5月には富士通が50年にCO2の排出量をゼロにする「中長期の環境目標」を発表、6月にはパナソニックが同様に50年ゼロを発表した。それと前後し50年を目標に、日産自動車は新車のCO2排出量を90%削減(00年比)、コニカミノルタは製品の生産や使用で出るCO2排出量を80%削減(05年比)など相次ぎ脱炭素への取り組みを強化している。ゼロエネルギー住宅の先頭を走る積水ハウスは、50年に住まいからのCO2排出ゼロを目指し、20年までにエネルギー消費ゼロの住宅販売比率を80%まで高める計画だ。
イノベーション引き起こし企業業績向上
この数年、低炭素化ではなく、一段高い目標である脱炭素化へ企業が大きく踏み出した背景には、20年以降の地球温暖化対策を定めた国際的な枠組み、パリ協定が昨年11月に発効したことが大きく背中を押している。パリ協定では、気候変動を安定させるためには、2050年以降、石炭や石油などの化石燃料の消費をゼロにする必要があると指摘している。
炭素ゼロへの取り組みは企業イメージを高めるだけではなく、省エネ、再エネおよびその関連、周辺部門に様々なイノベーション(技術革新)を引き起こし、企業の業績向上に大きく貢献することが期待される。
「RE100」と連携、グローバルベースで脱炭素、再エネ利用推進を期待
グローバルベースで見ると、欧米を中心に世界の有力企業が参加し、「事業運営を100%再生可能エネルギーで賄う」ための企業組織体として、14年に「RE100」
が発足した。「Renewable Energy 100%」の頭文字をとったものだ。今年1月末時点で、すでにスイスの食品大手、ネスレ、スウェーデンの家具メーカー、イケア、ドイツ自動車大手のBMW、アメリカのアパレルメーカーナイキなど87社が参加している。日本からは50年のCO2排出ゼロを早くから掲げてきたリコーが最近参加した。炭素ゼロに取り組む日本企業も「RE100」と連携し、企業の脱炭素化、再エネ化、さらに水素エネルギーの積極利用の新たな活動をグローバルベースで展開していくことを期待したい。
(2017年10月10日紀)